ふだん街中で見られるような4ドアのセダンやハッチバックをベースとしたレーシングカーによる選手権、世界ツーリングカー選手権(WTCC)。そんなWTCCだが、特徴的なのはそのレース距離の短さだ。現代のツーリングカーレースはどんどんレース距離が短くなっているが、WTCCはその最たるものかもしれない。日曜日に『オープニングレース』と『メインレース』と名付けられた2レースを一気に行うのも特徴的。これはいったいナゼだろうか?
「WTCCは、映像的におもしろみを出すような試みをレギュレーションに組み込んだ、珍しい世界選手権なんだ。エンターテイメント性を重視した予選、決勝の方式など、どうすれば面白くなるか?という点をすごく考えてる」と二朗さんが教えてくれた。
「『押しあいへしあいのケンカレース』なんてよく言われるけど、それは結果論。どういう見せかたをすればテレビ番組としておもしろいかという点を念頭に置いて、すごく考えられていると思う。まずは1レースの時間が短いこと。そしてオープニングレースとメインレースのインターバルが短いことなんかもね」
「逆に言えば、オープニングレースで本気のぶつけ合いをやってしまうと、メインレースで走れなくなっちゃう。エンジンも年間1基しか使えないから、大きなクラッシュをしちゃうと大変だよね」
「今年のレギュレーションは少しシンプルになったけど、おもしろみを出そうとする試みがルールを複雑化してしまった面もあるくらい(笑)。レースも2レース制だけど、今年から1レースめをオープニングレース、2レースめをメインレースという考え方にしてる。予選方式に関してはちょっとだけ複雑で、Q1を通過した上位12台で争うQ2で、上位トップ10がリバースグリッド。予選でも選手権ポイントを付与するシステムを作ってるから、どのドライバーも全力で走るようになってるよね」
「それと、ウエイトハンデもあるんだけど、日本のスーパーGTで用いられているのとは違って、シーズン途中で性能が開きはじめると、多くのウエイトを積まれるようになってる。FIAの告示のもとで調整が行われるので従うしかないから、対策は大変だと思うよ。ウエイトハンデという呼称じゃなくて、『コンペンセーション・ウエイト』って言うのも特徴だよね。コンペンセーションは『補正』って意味がある」
車種によってはかなり大きなハンデとなることもあるコンペンセーション・ウエイトだが、大きな批判がメーカーから出ないのは、参戦しているメーカーやチームがすべて、WTCCがひとつのエンターテインメントとして成立していることを理解しているからだろう。“ひとり勝ち”や“独走逃げ切り”がこのレースに求められているのではないのだ。