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旅先の本屋さんがおすすめする1冊は?

2016年07月21日 00:02  オズモール

オズモール

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知らない町に迷い込むのと、本屋さんで心を遊ばせるのは、どこか似ている気がする。
そして、旅先で出会った本の一節はなぜか、いつも以上に心に残ったりもする――。
全国の町の味わい深い本屋さんが、旅のお供におすすめの1冊を教えてくれる、リレー連載。
香川県高松市の「BOOK MARUTE」さんがご紹介くださったのは、新潟県新潟市のこちらです



◆なくても困らないけれど、
あったらちょっと嬉しい、そんなお店


“エフサン”というちょっと変わった名前と読み方の由来を尋ねたところ、「読み方がかわいいかなぁと思って」と店主の小倉快子さんが教えてくれた。
「カメラの絞り値(カメラの光を取り込む量)を“f値”といって、F1.4、F2、F2.8、F4…と表すのですが、F3という値はないんです。日々の暮らしの中では、本屋はなくてもいいものかもしれないけれど「あるとちょっといいよね」と思ってもらえるような存在になりたいという願いを込めてつけました」
さらには、おばあさま の名前が“エフミ”さんだったことも決め手になったという。


◆おじいさんとおばあさん、ふたりの
旅の記憶を辿る写真集


小倉さんが故郷である新潟でお店を始めたのは2015年12月のこと。
「かつて新潟はつまらない街だと思って離れたのですが、戻ってきたらおもしろい人やこと、お店がたくさんあって楽しくて。いまでは大好きな街です」と小倉さん。今回紹介する「STARDUST」の著者である写真家・飯塚純さんも、そんな“おもしろい人”のひとりだ。
「この本は、飯塚さんが直接お店に持ってきてくれました。飯塚さんのおじいさまの遺品から見つけた古い写真を複写して、再構築した写真集なんです。撮影したのはおばあさまだそうですが、センス抜群で、古さも感じさせません。ページをめくっていると、まるでふたりと同じ景色を眺めているような感覚になれるんです」


(函に書かれた詞)
『紺色の空に浮かび カーテンの隙間から揺らめく あなたは決して瞳を閉じない 太陽が空にある迄――STARDUSTより

◆「写真っていいな」「写真集買ってみようかな」
そんな風に思ってもらえたら嬉しい


BOOKS f3があるのは、もともと市場として使われていた長屋を改装した、懐かしい趣の沼垂(ぬったり)テラス商店街のすぐそば。カウンターでは、本を読みながらコーヒーや紅茶を飲むこともできる。
写真家でもある小倉さんが、写真集を中心に新刊・古書をセレクト。お店に並べるだけでなく、毎月、いろんな人が好きな写真集を持ち寄って紹介し合う「写真集を囲む会」も開催している。
小倉さんの願いは、このお店を訪れる人の心や暮らしに、ささやかな刺激や楽しみを与えられるような場所になること。「日常の中で本屋にあまり行かなかった人が、本屋に行くことや写真集を買うこと、ここでコーヒーを飲むことが当たり前になったら、街はもっともっとおもしろくなる――そんな気がしています」