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不振の予選から一転。琢磨がトロントで会心の走りを披露

2016年07月20日 23:31  AUTOSPORT web

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インディカー第12戦トロント/予選20番手から今季ベストリザルトの5位でレースを終えた佐藤琢磨
今シーズンのインディカー・シリーズでは唯一アメリカ国外での開催となるレース、ホンダ・インディ・トロントは、カナダ最大の都市であるトロントのダウンタウンのすぐ南、オンタリオ湖沿いにある催事会場のエキジビション・プレイス特設コースで行われる。カナダには情熱的なインディカーファンが多く、トロントでのレースは毎年盛況で、今年30回目の開催を迎えた。

 今年はコースレイアウトに変更がなされた。インフィールドに高層ホテルが建設中のため、ピットがコースの最終コーナー付近、外側に移設されたのだ。ターン9から11の左、右、左と連続するコーナーはコース幅が大きく狭められことで、高速セクションから一転、スピードダウンはしながら、テクニカルでレースをよりおもしろくする可能性を新たに作り出すとの期待も高まった。

■好調な金曜日から一転
 金曜日にはプラクティスが2回行われ、佐藤琢磨(AJフォイト)は手応えを感じていた。走り出しからマシンが良かったことで4番手につけ、プラクティス2でのポジションは14番手と悪かったが、フレッシュタイヤを投入すれば、自らのセッティングをコピーして走ったチームメイトのジャック・ホークスワース(10番手)よりも上位に顔を出せるとの確信を持っていたからだ。

 ところが、翌土曜日になると状況はガラリと変わった。マシンの好フィーリングがなくなり、「予選トップ10は間違いなく、ファイアストンファスト6入りも十分狙える」と金曜に語っていた琢磨が、レッドタイヤ装着でも1分1秒4012しか出せずにQ1で敗退。グループ1のブービー賞で、グリッドは最後列ひとつ前の20番グリッドとなった。

「金曜日には力強く走れていたので、今日の結果には驚き、ガッカリしています。今朝のプラクティスから苦戦は始まり、予選も同様に厳しい戦いになっていしまいました。原因については、まだ判明してませんが、グリップ不足で、バランスも悪い」と琢磨は頭を抱えるしかなかった。

 しかし、決勝日の朝に再び状況が変わった。30分という短い走行時間だったが、施し直したセッティングが非常に良く、ブラックタイヤ、レッドタイヤともに安定したハイペースで走れるマシンとなっていた。

「良いはずのセッティングが昨日うまくいかなかったので、“切り捨て御免”とばかりに逆のセッティングにしたら、一気に良くなりました」と琢磨に笑顔が戻っていた。問題はスターティンググリッドがあまりにも後方であること。トロントはメインストレートの先のターン1、その先のロングストレート・エンドのターン3、そこから続くターン5、更にはターン8とオーバーテイクポイントが多いが、上位進出に展開や作戦をうまく利用する必要があることは明らかだった。

■歯車がうまくかみ合いベストリザルトを獲得
 そして、琢磨はレース中にもっとも多くの順位を上げたドライバーに贈られる“ハード・チャージャー・アウォード”を受賞する5位フィニッシュを果たした。

 序盤にはなかなかポジションアップが叶わなかったが、2回目のピットストップをギャンブル的タイミングの47周目に、フルコースコーションを利用して行った。残りのレースがグリーンのままであれば、ゴール目前に燃料のスプラッシュが必要となるが、終盤に長いコーションが出る可能性もあるのがストリートコースのため、勝負に出たのだ。

 すると、58周目にジョセフ・ニューガーデン(エド・カーペンター・レーシング)がターン5で単独クラッシュ。フルコーションが出された。イエローが続く60周目にトップグループがピットイン。コースにステイアウトした琢磨は63周目のリスタートを4番手で迎えました。

 ここからの琢磨は、予選2位だったエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)とバトルしてパスを許したものの、予選6位だったジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン)を追いかけ、予選12位だったトニー・カナーン(チップ・ガナッシ)とバトルし、さらには、後方に迫って来た予選10位のミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン)の攻撃を退け続け、5位でチェッカーフラッグを受けた。

 デビューから数年、琢磨はトロントのトリッキーな路面に悩まされていたが、一昨年からは自信を持って走れるようになっており、今年の新レイアウトも気に入ったようだ。その結果、トロントでの過去最高位に並ぶ成績=5位を獲得。これは今シーズンの自己ベストリザルト=ロングビーチに並ぶものだ。

「好調で始まったものが苦しい週末に代わり、予選は厳しい結果になっていました。しかし、レースでの僕らは強敵と戦い、最終的に素晴らしい成績を手にすることができまし。ラリー・フォイトとエンジニアたちは正しい作戦をチョイスしてくれました。マシンも非常に良かった」

「さらに、大事な局面でのピットストップが完璧でした。コース上で何台かをオーバーテイクできたし、燃費セーブをしながらもコンペティティブに戦えていた。チームが本当に頑張ってくれた.彼らを誇りに思います」と琢磨は喜び、「この勢いで次のミッド・オハイオも頑張りたい。来週テストに行けるので、それは必ずプラスに作用するはず」と語っていた。