7月31日の東京都知事投開票まであと10日あまり。現在、鳥越俊太郎氏や小池百合子氏、増田寛也氏ら各候補者が都内各地で街頭演説を行っている。そんな中、現在何かと物議を醸している鳥越氏が、自身の公式ツイッターに東京都の出生率と結婚に関するツイートを投稿し、議論を呼んでいる。
注目されているのは鳥越氏が7月18日に投稿したこのツイートだ。
「東京は出生率が一番低い。なぜか。若い人たちが結婚できないからだ。非正規雇用が4割になり、非正規雇用の方の半分は結婚できない。ホワイト企業を優遇することにより、正規雇用の推進を図っていきたい」
働く人の3人に1人は非正規雇用、婚姻率の低さに影響
都の2015年度の合計特殊出生率は1.17で全国最低。近年は回復傾向にはあるものの、全国平均の1.46はまだまだ先だ。
鳥越氏は都の出生率が低いのは雇用が不安定で結婚できないから、としているが、実際、正規と非正規で結婚率はどれほど違うのだろうか。厚生労働省職業安定局の2014年の資料によると、正規雇用の30代前半の男性の婚姻率は62%だが、非正規雇用の場合は25%にとどまっている。やはり、定職に就いていないとなかなか結婚に踏み切れないのだろう。
総務局統計局が今年2月に発表したデータによると、2015年の非正規雇用の割合は37.5%。働く人の3人に1人は非正規ということになる。男性が非正規雇用を選んだ理由で最も多かったのは「正規の職員、従業員の職がないから(26.9%)」だった。
最近は正社員になれたとしても、環境がブラックなために続かず、非正規に逆戻りしてしまう人も多い。そういう意味では、ホワイト企業を応援するという鳥越氏の主張も納得はできる。
テキサス親父日本事務局「周囲が薄っぺらな知識をレクチャーしてる」
ただ、前述の鳥越氏のツイートに対して、反論の声が寄せられた。非正規でお金がないと結婚できないというなら、「所得が最低の沖縄県で出生率が高い理由が説明できません」という指摘のほか、
「なんで結婚にこだわるんだろう。出生率にこだわるのなら、結婚という制度抜きに子供を育てていける仕組みを作るほうが先ではないのか」
という声も。フランスのように子ども手当を手厚くし、シングルマザーでも安心して育てられる環境を作るべき、ということだろうか。
さらに、テキサス親父日本事務局は、
「非正規雇用は絶対に良くない。しかし、鳥越さんが言っている理由ではなく、若い人は結婚したら、物価が高い東京ではなく神奈川、埼玉、千葉に移り住むからだよ」
とツイートし、出生率の低さと雇用を関連付ける鳥越氏の論点の誤りを指摘した。そのうえで、「本人はボケてるようだから、周囲が薄っぺらな知識をレクチャーしてるんだろうけど、完全にピント外れなんですよね。ハンドラー達もダメダメですね」と辛口だった。
鳥越氏は12日の会見で都の出生率を「1.4前後」と間違えた上に、「他のところよりも高い」と発言していた。やはり、急ごしらえで選挙の準備をした、という印象が拭えない。
ウェブサイトで政策を読んでも、ツイートにあった雇用改善などについての具体策は一切書かれておらず、頼りない印象を受ける。都民に声を直接届ける街頭演説も、「時間がない」という理由で40秒で終わらせてしまうなど、いまひとつだ。
鳥越氏は元新聞記者という経験をアピール。「人の声を聴くということが染みついている」と発言しているが、有権者からは「まず自身の政策の具体案と財源を話してください」という声が多く聞かれる。人の声を聞くのは大切だが、有権者である都民に対し、自身の考えを強く話すことが必要ではないだろうか。
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