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WHITE ASH、ツアー最終日赤坂BLITZ公演をレポート 自身最多ツアーで作り上げた“ライブ”とは

2016年07月20日 14:01  リアルサウンド

リアルサウンド

WHITE ASH(写真=柴田恵理)

 WHITE ASHが7月10日、東京・赤坂BLITZにてツアー『Emperors And Dumbasses』のファイナル公演を開催した。アルバム『SPADE 3』のリリースツアーとして、バンド史上最多となる17公演を行なった本ツアー。“ライブ”を意識して作られたという意欲作『SPADE 3』の楽曲をメインに披露した最終日は、ステージングの幅を広げたWHITE ASHの新しい魅力を感じさせるステージだった。


(参考:WHITE ASHはロックミュージックをどう再定義した? 新アルバムのモダンな音楽性を分析


 WHITE ASHは、アルバムと同名曲「Spade Three」から本公演の幕を開けた。ステージの左右に設置された台に山さん(Gt)とのび太(Gt/Vo)が乗り、『Red Bull』をイメージして作られたという同曲を、まるで二頭の闘牛が闘いを仕掛け合うようにツインギターで鳴らし合った。続いて、打ち込みと生音をミックスした「Insight」では、サビのギターに合わせて観客が腕を上げ一斉に飛び跳ねる姿も。のび太が「ファイナル楽しんでこうぜ!」と叫ぶと、激しく点滅するストロボライトの演出が効いた「Number Ninety Nine」、「Crowds」で彩(Ba)が髪を振り乱しながら激しい演奏を披露した。「Thunderous」では、剛(Dr)が叩く押し寄せてくるようなビートが観客の高揚感を煽った。


 ここで、のび太の「みなさん楽しんでますか! 勢いのある曲で飛ばしたんで、膝を曲げてリズムを取るといい感じのやつ、サビでジャンプするといい感じのやつ、そういう曲たちをやろうと思いますので、自由に楽しんでってください!」とのMCを合図に、剛のリズミカルなビートに乗せて、彩のベースがメロディラインを奏でて始まった「Teenage Riot」を演奏。MC通り、のび太もオーディエンスも飛び跳ねながら全力でライブを楽しんでいた。


 照明が暗くなると、のび太が「Snow Falls In Lavender Fields」をアコースティックソロで歌い上げた。その雰囲気のまま「Ledger」「The Phantom Pain」のような1つ1つの音の重みを感じさせるダークな楽曲が続き、曲調に合わせた照明のミステリアスな演出が会場の雰囲気をガラッと変えていた。


 曲間で、ツアー会場に足を運んでくれたファンのおよそ4割が初めてワンマンライブに訪れた人たちであると知ったのび太は「僕がしゃべるときは自由に和気あいあいとしてね」と、改めてWHITE ASHのライブの楽しみ方を伝授。さらに、ツアーファイナルに訪れたファンへのサービスとして、大学時代にコピーしていたというアークティック・モンキーズの「Brianstorm」を披露。彼らのバンドに最も影響を与えてきたアークティック・モンキーズの疾走感のあるドラムから耳馴染みのあるギターリフまでを、アレンジを一切加えないWHITE ASHの音で再現した。演奏を終えると「のび太!」「山さん!」と会場の様々なところからメンバーの名前を呼ぶ声が上がり、「たかし!」と呼ばれた声にのび太は「いやいやそれ僕が家で飼ってる猫」と笑いが起こる場面も。先ほどのMCで、のび太が初めて訪れたファンにむけて話していた言葉がすぐに伝わったことを感じた。


 その後、ギターを下ろしたのび太がマイクを握り「行けますか赤坂BLITZ!」と、観客を煽り「Paranoia」へ。メンバーがステージ上を駆け回り、フロアは手拍子や歓声が湧くなか、「Blaze」「Pretty Killer Tune」「Jails」とおなじみのナンバーで盛り上がりは最高潮を迎えた。


 のび太は「最後に歌う曲は、今日ここにいるみんなへの感謝の気持ちを込めた曲です。ワンマンにまで足を運んでくれるのって、本当にありがたいことだなって思ってる。みんなが来てくれるからステージに立ててる。僕らも誰かにとって1番のお気に入りのバンドになれたらいいなって思って歌います」と語りかけ、アルバムラストの収録曲でもある「Don’t Stop The Clocks」を最後に演奏。美しいメロディーで奏でられる同曲は、本日演奏したどの楽曲とも異なるWHITE ASHの壮大さを感じさせた。


 アンコールで登場した山さんは「初めてライブを意識して作ったアルバムで、それが各地のお客さんの表情とかがすごい良くて。今までの曲を聞いて来てくれてて、どんどんノリノリになっていくお客さんとかも見て、ぐっときました」と感極まりながら語った。のび太は「サビでみんなに歌ってもらいたいメロディーがあって」と観客に歌の説明をしたのち、新曲「Yellow」を披露。初披露の新曲にも関わらず、サビではしっかりと観客がシンガロングで応え、剛のドラムソロ、のび太と山さんが交互にギターを鳴らすなど、各々がのびのびと音楽を奏でていた。


 そして最後には「Stranger」を演奏。アンコールは終了かと思いきや、ダブルアンコールがかかり、メンバーが再び登場。スペシャルゲストとしてゲームアプリ『モンスターストライク』のキャラクター・レッドリドラも現われ、同アニメの主題歌を収録した3rdミニアルバム『Quest』のリリースを発表した。この日は収録曲から「Monster」「Strike」をレッドリドラと共にステージで初披露。そして、ツアー最終日の最後の曲は、彼らのメジャーデビュー曲「Velocity」。会場全体をライトが照らした明るい雰囲気のなか、観客と笑顔を向けあったステージを作り上げ、本公演の幕を閉じた。


 前回の公演(WHITE ASH、音楽で“つながった”渋谷クアトロ公演レポ レア曲やファンとのセッション披露も)では、メンバーとファンとのつながりを体現したステージが印象的だったが、同ツアー最終日に見た彼らには、今作を通して1曲1曲の演奏の見せ方に磨きがかかり、楽曲の持つイメージをより印象強くさせた。演出を凝らしてWHITE ASHの曲の雰囲気を極限まで引き立たせるステージ、オーディエンスと共に飛び跳ねて笑顔が溢れるステージ……様々な見せ方で自分たちの魅力を最大限に引き出したライブだった。今後も、3rdミニアルバム『Quest』、さらなる新作を経て、ライブや楽曲の面でどんどん加わっていくだろう彼らの魅力を楽しみにしたい。(文・取材=大和田茉椰)