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「最後の恋、いい夢見た」80歳母が30代男性に1億円贈与、息子は返還請求できる?

2016年07月20日 10:22  弁護士ドットコム

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一人暮らしの80歳近い実母が、親族の知らない間に「最後の恋、いい夢を見せてもらったから...」と30代の男性に1億円以上を生前贈与していた。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにある男性から投稿がありました。


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投稿者によると、母親と相手の男性は「友達」と言いながら、2人で旅行に行ったり食事もしていたようです。それに加えて「最後の恋、いい夢を見せてもらったから…」との母の言葉。投稿者は、男性が「母の金目当てで近づいてきた」と疑っています。また、男性は用意周到に契約書まで作成しており、日付、署名捺印、条件なしで贈与する旨まで書いているそうです。


投稿者は「母の身勝手な行動に唖然としてしまいました。黙って引き下がるわけにはいきません」と納得のいかない様子です。ちなみに母親は「頭はしっかりしており、今のところ認知症でもありません」とのことです。


このようなケースの場合、親族は生前贈与を取り消したり、一部だけでも男性から取り返すなど、何か取りうる手段はないのでしょうか。萱垣建弁護士に聞きました。


 ●書面による贈与は取り消せません


今回のケースは、契約書がありますから、書面による贈与ということになります。


民法550条は「書面によらざる贈与は、各当事者は、これを取り消すことができる」と規定していますが、その他に取消・撤回に関する規定はありません。とすると、この民法550条の反対解釈によって、書面による贈与は、取消・撤回ができないことになります。


これは法律の不備だと言う学者もいますが、現在の裁判所は、贈与が書面でなされた場合、原則、取消・撤回を認めません。ですから、親族が、相手の男性からお金を返してもらいなさいと母親を説得できたとしても、母親自身、取り戻すことができないのです(なお、受贈者が、贈与者に受けた恩に背くような著しい背信的行為が認められる場合に撤回を認めた判例はあります:最高裁昭和53年2月17日)。


ただし、例えば、結婚すると約束してお金を出させたが、本当は結婚するつもりなどなかったというような場合には、詐欺・錯誤を理由として贈与したお金を取り戻せる可能性はあります。また、今回のケースで、お母さんが亡くなった場合、その生前贈与を遺留分減殺の対象にすることができる可能性はあります。




【取材協力弁護士】
萱垣 建(かやがき・たてる)弁護士
平成5年登録。弁護士経験23年。平成23年度愛知県弁護士会副会長。愛知県弁護士会及び中部弁護士会連合会の委員会の委員長、日本弁護士連合会の委員会の副委員長を経験。わかりやすく、疑問が残らないように説明することがモットー。

事務所名:万朶総合法律事務所