マシン規定の変更で2017年のWRカーがさらなる高速化を果たすと予測されるなか、タイヤ開発の現場でも、その速さに追いつく必要に迫られている。
増大したパワーにより高速化するマシンの安全性も懸念されており、世界ラリー選手権(WRC)にタイヤを供給するミシュランとDMACKは、タイヤの再設計を余儀なくされるとみられている。
DMACKタイヤのマネージング・ディレクター、ディック・コーマックは、マシンの出力増大により、タイヤの耐磨耗性の向上が急務であり、同時にグリップを制限することで速度上昇を抑えつつ、十分な磨耗性能を確保することが求められる、と語った。
「ミシュランと私たちは特にグラベル路面において、摩耗レベルの大幅な増加があると見込んでいる」とコーマック。
「これは、問題に対処するためにコンパウンドもパターンも変更する必要性があるということを意味する」
「もしトレッド幅を大きくした場合、タイヤライフには余裕が出るだろう。しかし、必然的にトレッドブロックのギャップを広げる必要があり、そうすればグリップレベルが低下する」
こうした状況を踏まえてコーマックは、改訂されたタイヤを使用する場合、先頭でステージを走行する選手権リーダーは、これまでも苦しめられたタイヤライフとグリップで、さらなる困難に直面するだろうと予測している。
「ラインがクリーンならば、まだコンパウンドのグリップを得られるかもしれない。しかし、路面が汚れている状態で走る先頭走者は、(上記のパターン変更によって)さらなるグリップダウンに悩まされることになる」
また、WRCのラウンドコストを削減する施策の一環として、デイごとにドライバーが使用可能なタイヤ本数を1セットに制限する案を議論しており、コーマックはこの案に対しても懐疑的な見方を示している。
「WRCならではの魅力と、ラリーが持つの耐久的側面には、大きな違いがある」
「WRCは、すべてのステージを可能なかぎり全開でアタックすることが魅力であって、タイヤを1セットに制限しては、それをスポイルすることになってしまう」
「WRカーは1台につき45万ポンド(約6300万円)も掛かっているのに、タイヤの本数制限で節約できるのは250ポンド(約3万5000円)程度に満たない。これではほとんど意味をなさないよ」