まず、世界ツーリングカー選手権(WTCC)とはどんなクルマによるレースなのだろうか。ツーリングカーレースとは、単純に言ってしまえば、ふだん街中で見られるような4ドアのセダンやハッチバックをベースとしたレーシングカーによる選手権だ。ただし、その改造範囲は厳しく規定されている。
「規定がガッチリと決まっているからね。大幅な変更はできないし、エンジンに関してはGRE(グローバル・レーシング・エンジン)という規定があって、シーズンを通じて1基しか使用できないくらい。例えばピストンの重さに関しても細かい規定があるくらい」と二朗さん。
「車体にもホモロゲーションの細かい規定があって、日本円で最低2000万円以下のクルマがベース車。そういう意味では、シビックなんかは参加車両中でももっともスポーティなクルマかもしれないね」
二朗さんの話にも出たとおり、現在WTCCに参戦している車種は5種類。日本のホンダが送り込むシビックWTCCをはじめ、ここ2年チャンピオンを獲得してきたフランスのシトロエンC-エリーゼWTCC、ロシアのラーダ・ベスタWTCC、プライベーターが多く活用するシボレーRMLクルーズ、そして今年から参戦を開始したボルボS60 WTCCという車種がそろう。
特徴的なのは、ホンダやラーダがスポーティなイメージをもつ車種をベース車にしているのに対し、シトロエンが使用するC-エリーゼは、新興国向けのセダン。これらの車種選別にも、自動車メーカーのプロモーションの意志が色濃く反映されているのだ。近年は「ただのセダン」な印象から抜け出て、エアロパーツで武装。よりレーシングカーっぽい外観となっている。ホイールも市販車のものが使われており、愛車のチューニングにも参考になること請け合いだ。