「最高のレースだった」とSF第3戦富士を振り返った星野監督。会見では星野節全開で会場を盛り上げた。 スタートからレース中盤に最終ラップ、そしてトップ争いに表彰台争い、最後のチェッカーを受ける際の入賞争いなどなど、とにかく接近戦、バトルが多く、近年希にみる好レースとなったスーパーフォーミュラ第3戦富士。
今回は決勝まで完全なドライセッションがなく、ヨコハマタイヤを装着して初めての富士となったことや、ブレーキパッドがこの富士から新しい素材になったことなどなど、いつも以上にオーバーテイクやバトルが多くなった理由はいくつか挙げられるが、最後に勝負を決めたのはドライバーの執念、ドライバー力だったと言える。優勝したITOCHU ENEX TEAM IMPUL星野一義監督の言葉が、まさに今回のレースを象徴している
「正直なところ、今日のレースはちょっとヤバイかなと J-P(デ・オリベイラ)がちょっとしたミスで(中嶋)一貴選手にかわされて、でも、そのJ-Pがコンマ1秒、コンマ2秒の中で(トップの一貴選手と)同タイムで走っていて、負けたり勝ったりしているところでちょうどセーフティカー(SC)が入ったんですけど、今回は本当にSCが入って頂いてありがとうございました。このレースのポイントで運もあるしね」と、まずは今回のレースの勝敗のポイントを振り返る星野監督。チェッカー直後は多くの関係者からの祝福を受け、目には涙も見えた。だが、そこはさすが星野監督。優勝会見ではいつもの星野節で会見場を湧かせた。
「何より、優勝した監督として嬉しいんですけど、(中嶋)一貴がル・マンで優勝手前でああいうことになって、本当は無線でJ-P(デ・オリベイラ)に『一貴がかわいそうだから譲れって』って言おうとしたけど、それは冗談で(笑)。それにしても今日のレースは最後のドライバーの執念、魂、ファイト、すべて最後のチェッカーを受けるまで分からないという、素晴らしいレースを見せることができたのが本当に嬉しい。今日のレースは本当に最高でした」
自身のチームが勝ったからだけではなく、星野監督から見ても、この第3戦富士戦は内容の濃いレースだった。そして今回のレースを大きく盛り上げたのが、オリベイラと一貴のトップ争いであるのは間違いないが、もうひとつ、関口雄飛の3位表彰台を掛けた戦いも今回のレースのハイライトのひとつだった。星野監督も、その関口を手放しで讃える。
「関口が本当に日本人の中でもファイトあるプレーで出てきてくれて、僕はもう何もコメントは言わずに彼が体で感じて、(順位を争ったアンドレ)ロッテラーからあの辺を全部抑えて、誰かが絡むんじゃないかと思ったんですけど、そこを抜けて出てきた。これはもう、教えてできることじゃなくて彼の動物的なセンスだと思う。これからそういうセンスを活かして、どんどん飛躍して、トップスター、一貴選手みたいなドライバーと戦ってトップドライバーになってほしいと思います」
レース終盤、3番手から6番手まで4台が一団となった戦いで見事、3位に抜け出した関口。その関口にとっても、バトルを制することができたのは星野監督の存在があったからだという。
■「バンドーン? 知らねえし」と星野節ならぬ関口節も全開
「バトルの時に何度かロッテラー選手を抑える場面と抜く場面があったんですけど、星野さんのチームで、監督が『ガンガン行け!』と言ってくれているので、ぶつかっても怒られないだろうなと思っていたし、ロッテラーにぶつかって、ちょっと押し出してしまったんですけど、強い気持ちで、「(ストフェル)バンドーン? 知らねえし、絶対負けねえから』という気持でレースしていました」と、こちらも星野節に負けない関口節が全開。
その関口のコメントを聞いた星野監督が関口の言葉の悪さにすかさず、「賞金没収!」(笑)と、突っ込んだが、この関口のスタンスこそ、星野監督が求めていた星野イズムでもある。関口も、監督への感謝の言葉を続ける。
「そういう監督がいてくれるので、他のチームだったらぶつからないように引いてしまって、消極的になってしまう部分でもあると思う。でも、これは本当に監督のおかげだと思っています。このような環境で走らせて頂いて、本当に感謝です」
「大きく育てたいからね。小さくまとまるんじゃなくてね。今日はすごくよかった。大したモンだよ」(星野監督)
まるで親子対談のような展開となった会見だったが、コンディションを含めて週末は目まぐるしく状況が変わり、どのドライバーもチームも手探りでセッションを進めていくなかで、最後に勝負を決めたのは、このドライバーのファイティングスピリットだった。そんなドライバー力を感じさせるレース、ドライバーの一途に勝利を目指して邁進する姿にこそ、ファンは感動を覚え、応援をしたくなる。第3戦富士は、そんなモータースポーツの原点を感じさせる、熱い戦いとなった。