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野村周平、愛されキャラの秘訣は“甘え上手”にアリ? 桐谷美玲との「あーん」から考える

2016年07月17日 15:51  リアルサウンド

リアルサウンド

『好きなひとがいること』公式サイトより

 若手の脚本家・演出家として活躍する登米裕一が、気になる俳優やドラマ・映画について日常的な視点から考察する連載企画。第七回は、月9ドラマ『好きな人がいること』(フジテレビ)に出演中の若手俳優・野村周平の“甘え上手”なところについて。(編集部)


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 人に「甘えられる男」の魅力について考えたいと思います。いろいろな役者さんと接していると芝居を見ているだけで「この人は普段から甘え上手だろうな」とか、「甘えベタだわ」と分かる事があります。甘え上手な人は、自分の感情を素直に出す事に慣れています。逆に甘えベタな人は、自分の感情を出す前に相手に「どう思われるか」や「どう見えてしまうか」という方に意識が行く人が多いです。人目を気にし過ぎるという意味では、そういう人は「見栄っ張り」と言えるのかもしれません。


 もちろん、人に甘えてばかりの「ダメ男」を目指すことを勧めたいわけではありません。甘えが過ぎると「依存」になってしまいますし、程よく見栄を張る分には「頑張り屋」とも言えるでしょう。


 月9ドラマ『好きな人がいること』の初回放送で、野村周平くん演じる柴崎冬真が、桐谷美玲さん演じる櫻井美咲に「あーん」と言って食べさせてもらうシーンがありました。「あーん」って案外難しいセリフだと思います。「食べたい」「食べさせてもらいたい」と言う感情が素直に表現されていなければ、意味が変わってきます。このシーンを野村くんは素直に演じており、きっと甘え上手なのだろうなと思いました。


 性欲、食欲、睡眠欲と言う人間の三大欲求を満たしたいと言う感情は誰にでもありますが、「眠たい」「食べたい」「エッチしたい」とシンプルに出してしまうと「こいつ馬鹿だな」と相手に思われてしまうかもしれません。こう言う時、甘えベタな人は「馬鹿だと思われたくないから我慢してしまう」のです。それは言い換えれば、「格好つけたまま欲求を満たしたい」人ともいえるでしょう。格好つけること自体を否定はしません。ただ、そちらに重きを置き過ぎて結局自分がしたかった事を見失ってしまうのは、もったいないと思います。


 甘え上手な役者さんは相手に「馬鹿だと思われる勇気」を持っている人です。そう言う意味でも野村くんは、勇気がある俳優さんだなと思いました。自分の感情に素直になれる人だからこそ、多くの人に愛されるのだと思います。


 役者に限らず、普段のコミュニケーションにおいても同じことが言えます。相手にどう思われるかよりも、相手に伝えたい気持ちに集中すると、言葉のニュアンスが変わってきます。たとえば、挨拶ひとつとっても、相手と会えた喜びを伝えたいと素直になっている人の「おはよう」は違います。元気いっぱい過ぎると、相手には天真爛漫に過ぎると思われるからもしれませんが、喜びを伝えられて悪い気はしません。


 相手を嫌っていたり憎んでいたりと、負の感情を持っているときはそれを隠さなければいけない場合もあると思いますが、伝わってしまっても相手が悪い気をしない感情なら、素直に伝えてしまえばいいのだと思います。


 ただ、「空気を読む」ことを大切にするこの国だと、素直に感情を表現するのは案外、難しいかも知れません。でもきっと、おたがいに「馬鹿だと思われる勇気」を持って接し合えば、もっと素敵な人間関係が築ける気がします。(登米裕一)