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THE YELLOW MONKEY、再始動の全国ツアーに感じた「安心」と「期待」

2016年07月17日 14:21  リアルサウンド

リアルサウンド

THE YELLOW MONKEY。(写真=有賀幹夫)

 THE YELLOW MONKEYの全国ツアー『THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2016』のさいたまスーパーアリーナ公演が7月9日、10日の2日間にわたり開催。本稿では9日の公演について触れたいと思う。


 今年1月に約15年ぶりとなる再始動をアナウンス。新曲「ALRIGHT」を発表するなど徐々に勢いをつけてきた彼らだが、5月11日のツアー開始以降はその勢いもさらに加速していった。きっと多くのロックファンは、このさいたまスーパーアリーナ公演の1週間前に日本テレビ系で放送された音楽特番『THE MUSIC DAY 夏のはじまり。』でのパフォーマンス(「SPARK」「バラ色の日々」の2曲を披露)で、彼らの充実ぶりを実感したことと思う。私自身もそんなリスナーの1人で、正直今回の再結成に対しては当初懐疑的なところもあった。しかし、テレビの中で生演奏する彼らの姿は間違いなく我々が愛したTHE YELLOW MONKEYそのものだった。だからこそ、今回のさいたまスーパーアリーナ公演に寄せる期待は気づけばより高いものとなっていた。


 会場に約2万人、2日間で計4万人もの観客が集い、間違いなく本ツアーにおけるひとつのクライマックスとなったさいたまスーパーアリーナ2DAYS公演。ちょうど全24本にわたるツアーの折り返し地点ということもあって、ライブ中に吉井和哉(Vo.)も「改めて初日のような気持ちで」と述べていた。


 ライブは新曲「ALRIGHT」はもちろんのこと、過去のヒットナンバーやインディーズ期の人気曲、解散前にはライブで披露されることのなった楽曲などバラエティに富んだセットリストで展開。初期のファンから後期のファン、そして解散以降に彼らのことを知った「生イエモン未体験」層まで、幅広い年代を楽しませるかのようなオールタイムベスト的選曲で観る者を熱狂させていった。また、バンドに対する観客の声援の大きさも圧倒的なものがあり、曲間にメンバーの愛称を叫ぶ女性ファンの声が聞こえてくると思わず「ああ、あの頃のままだ。THE YELLOW MONKEYのライブに来たんだ……」と、妙にワクワクしてしまう瞬間もあった。


 まだツアー中ということもあり、詳細なセットリストや演出についての記載は控えるが、まず最初に驚かされたのは彼らの出す音の太さ。ああいう大会場だとどうしても音と音がぶつかり合ってグシャッとしてしまうことも多いが、彼らの場合は1つひとつの楽器の音がしっかり聞き取れ、それぞれが太い音で自身の個性を主張している。もちろんそれは吉井の歌に関しても言えることで、彼が歌う一言一句がしっかり聞き取れるほどの絶妙なバランス感が保たれているのだ。PAエンジニアの技術はもちろんあるだろうが、それ以上にメンバー4人の演奏力、表現力がいかに優れたものかが垣間見れた気がする。


 そしてパフォーマンス。吉井による時にクールで時にセクシー、それでいて時にギャグを飛ばしながらおちゃらける姿はソロ時代とはまた違ったもののように思えたし、そのせいもあってか「そうだ、THE YELLOW MONKEYの吉井和哉ってこうだった!」と妙に納得させられたのも事実だ。そして吉井のバックでパワフルかつしなやかにリズムをキープし続ける菊地英二(Dr.)、妖艶さに加え大人の渋さも加わった菊地英昭(Gt.)のギタープレイ、今も変わらず豪快さをアピールし続ける廣瀬洋一(Ba.)のベースプレイ。彼らが奏でるサウンドのみならず、ちょっとしたアクションやメンバー同士の絡みを目にした瞬間、彼らのライブに幾度となく足を運んだ90年代に引き戻される。90年代との大きな違いといえば、吉井をソロ時代から支え今回のツアーからTHE YELLOW MONKEYもサポートすることになった鶴谷崇(Key.)が新たに加わったことぐらいじゃないだろうか。


 とはいえ、もちろん90年代のTHE YELLOW MONKEYをそのまま再現しているわけではない。ふと当時の記憶を呼び戻される瞬間は多々あったが、今目の前にいる彼らは“SUPER”の冠に相応しい、以前よりもパワーアップしたTHE YELLOW MONKEYだ。ただひたすらいかがわしさ満載だった初期の楽曲を今の彼らが演奏することでなんとも言えない“アダルトなエロさ”が加わったし、中~後期のじっくり聴かせる曲では言葉の重み、1音1音の深みが増した。この15年間、ソロやバンド、あるいはサポート活動などを通じて常に現役であったからこそなせる、「2016年のTHE YELLOW MONKEY」の姿がそこにはあった。しかも、その姿は2001年1月、東京ドームで解散前最後のステージに立った彼らから地続きだった。15年という長い時間を経てたどり着いた境地ではあるものの、それでいて15年もの歳月を感じさせない“続き”感が普通に存在していたのだ。だからこそ、彼らのステージからは一切の「(再結成バンドによく感じる)がっかり感」が感じられない。それって当たり前のようで、実はものすごいことなんじゃないだろうか。


 それともうひとつ。彼らのライブを観ながら感じたことは……実はこれ、90年代にも感じていたことなのだが、その存在感やステージでの佇まいの“浮世離れ”感はどこか別世界のもののように感じられ、その姿は私たちが幼少の頃に憧れた海外のロックスターのようだ、そういう意味でもTHE YELLOW MONKEYって本当に「洋楽的/外タレ的バンド」だなと。そのバンド名からもわかるように、彼らは外タレコンプレックスを逆手に取って、80年代末の国産バンドブームの中誕生した。その後、90年代に入るとバンドブームは廃れ、のちにV系バンドが台頭するようになるも、THE YELLOW MONKEYは常に唯一無二のスタイルで活動を続けた。その結果、彼らは何にも似ていない、誰にも真似できないポジションにまでたどり着いた。そしてあれから20年近くが経った今、結局THE YELLOW MONKEYのようなバンドはこれまで登場していない。ロックがよりドメスティックなものへと進化した2000年代以降、THE YELLOW MONKEYのような「洋楽的/外タレ的バンド」が生まれなくなってしまったのだ。そんな時代によみがえった彼らの姿は、ある種異形のもののようにも映る。だが、これこそがあの時代私たちが愛したロックバンド、ロックスターなのだ。そういう意味では、実は彼らの復活はこの15年ずっと待ち望まれていたものだったのかもしれない。


 吉井はライブ中、「THE YELLOW MONKEYは、もう生涯解散することはありません」「もう『THE YELLOW MONKEYの吉井和哉』がフルネームでいいでしょう。一生この冠で生きていくぜ!」と宣言するという、ファンには感涙ものの発言もあった。今のところ新曲は「ALRIGHT」1曲のみだが、きっとこの先まとまった形で新曲を聴くこともできるかもしれないし、そういった楽曲が中心となる(そして今回のツアーでは披露されていない、まだまだたくさんある名曲の数々が聴ける)ツアーも実現するかもしれない。そんな、以前だったら夢のまた夢だった思いも、きっと現実として叶うだろう……そう強く思わせてくれる至福の3時間だった。(西廣智一)