タイトル獲得のためにも、この第3戦富士を必勝体制で臨む可夢偉。 もともと第2戦から1か月半のインターバルがあったが、第2戦が大雨で赤旗中断となったため、久しぶり感がいつも以上に大きいスーパーフォーミュラ第3戦富士。その久しぶりのセッションとなった金曜の走行は残念ながらウエットコンディションとなってしまった。土日がドライコンディションで行わる可能性が高いので、第3戦の展開を予想するのに、金曜セッションからだけでは読みづらい状況となった。
それでも雨のセッションの中で石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)がトップタイムをマークしており、やはり石浦とこの2戦で好結果を残している山本尚貴(TEAM 無限)が今回の富士でも優勝候補の軸になることは間違いなさそうだ。だが、この富士で特に注目したいのが好調のふたりではなく、前評判が高かったのにこの2戦でまったく結果を残せなかったこのふたり、中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)と小林可夢偉(SUNOCO TEAM LEMANS)のふたりだ。
シーズン前に優勝候補に挙げられた一貴、可夢偉はこの2戦を終えて、まさかの0ポイント。もちろん、これが彼らがすべてを出し切ったパフォーマンスではなく、両名とも、この2戦はとにかくトラブルやアクシデントなど不運に見舞われた。そして不運に加え、予選で苦しんでいる。
一貴は開幕戦の鈴鹿の予選Q2でスプーンでスピンを喫し14位、前回の岡山でもQ2で敗退し9位と、予選一発の速さが出し切れていない。一方の可夢偉も鈴鹿では予選Q3でコースオフした車両の影響を受けてニュータイヤのおいしい部分を無駄にして8位。岡山では予選前のフリー走行でクラッシュし、クルマ自体の故障は小さかったものの、セットアップを煮詰める時間がなくなり、その後の予選ではまさかの17位。とにかく予選順位が大事な現在のスーパーフォーミュラで、一貴、可夢偉はこの2戦、完全に悪い流れの中にハマってしまった状況だった。
この2戦の悪い流れを断ち切るべく、両者は今回の富士に向けて、アプローチを変えて臨んでいる。一貴担当の小枝正樹エンジニアが「具体的には話せないですけど、今までタイヤの使い方でうまくいっていない部分があったので、セットアップをこれまでの2戦からガラッと変えてみようと思います。本当は今日、ドライで走りたかったのですが……(苦笑)」と雨を残念がったが、今回の富士へは並々ならぬ意気込みを匂わす。
■勝負は予選前の練習走行で決まる
一方、可夢偉が所属するチームルマン山田健二監督も「ここ2戦は流れが悪いですよね。クルマのイメージ的にはそれほど悪いとは思っていないのですが、勝つためにはもうワンステップ、上に行かないといけないので、この富士では新しいトライをしています。ファクトリーのリグ(7ポストリグ)でかなりクルマを揉んで、何百ランもしてきました。それが今日、試せなかったのがまた、ちょっと悪い流れですが……(苦笑)」と、こちらも準備万端の様子で、この富士を新しいセットアップで臨むことを明らかにしている。
金曜日がウエットコンディションになったことが、新しいセットアップを試せなかったチーム、これまで上手く結果を残せていないチームにとってはディスアドバンテージになってしまったが、まずは明日、土曜日の1時間の練習走行がひとつの勝負どころとなりそうだ。
土曜の練習走行は前回からの持ち越しセットで走行することになるが、前回の岡山の予選Q1で脱落したドライバーは今回、ニュータイヤを持ち越せる。今回の富士では可夢偉の他、ストフェル・バンドーン(DOCOMO TEAM DANDELION)、小暮卓史(DRAGO CORSE)、中山雄一(KCMG)の4台はニュータイヤが1セット多い状況なので、予選前の練習走行では順当ならば上位に来るはず。
今回注目したい一貴、可夢偉ともに、この富士で大量点を逃すとチャンピオンの可能性はかなり厳しくなる。3戦目にしてすでに背水の陣で臨まねばならない一貴、可夢偉の今回の出来映え、そして動向は、まずはその練習走行の結果で察することができそうだ。