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社長が怖くて、電話で社員に「退職の伝言」…これって有効?【小町の法律相談】

2016年07月15日 10:51  弁護士ドットコム

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電話で退職を告げたら、会社から突然、内容証明が送られてきたという相談が、Yomiuri Onlineの発言小町に寄せられました。


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投稿者(トピ主)は、働き始めて約1ヵ月の会社に、電話で、退職する旨を伝えました。仕事内容が自分が思っていた内容と異なっていたこと、また、社長の話し方や言い方がとても威圧的で怖く、仕事に支障をきたすと思ったことが退職の理由だといいます。社長には直接伝えず、電話に出た男性社員に伝言を頼んだそうです。


ところが、電話で退職を告げてから4日経った頃、会社から内容証明が届きました。そこには、「貸与している事務所の鍵と自転車の鍵を速やかに返却する事」「あわせて何の通知もなく退職した事について当社に損害の発生が認められる場合には法的手続きに移行する事を念のため申し添えます」という内容が書かれていたといいます。


トピ主は、「本来なら鍵と退職届を持って会社に行くべきだとは思います。ただ、とにかく怖くて会社に行く勇気がありません」と困惑しているようです。レスには「あなたが辞めたから損害賠償というのは会社の脅しです」という意見や、「一度行って鍵を手渡しで返し、退職の手続きをきちんとしましょうよ。大人として当たり前のことです」というコメントもありました。


トピ主は、会社から損害賠償を請求される可能性があるのでしょうか?そもそも、退職を口頭で告げることは、法的に有効なのでしょうか。今井俊裕弁護士に聞きました。


(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムが再構成したものです。トピ「内容証明が送られてきました」はこちらhttp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2016/0626/767562.htm?g=15)


 ●原則としては従業員の一方的な意思だけで退職できる


トピ主さんが、雇用期間の定めのない正社員であるとの前提で、まず、退職のルールについてご説明します。


退職に関しては就業規則などでルールが決められていると思いますが、たとえ会社が退職を承諾してくれなくても、従業員の一方的な意思だけで退職することはもちろん可能です。職業選択の自由があるからです。


ただし退職する日付については、月給制の場合は、給与の締め日までの期間の前半に申し出れば直近の締め日で退職でき、後半に申し出れば次の締め日で退職できる、というのが民法の定めです。


例えば、締め日が毎月20日の会社では、仮に6月21日から7月5日までの間に退職を申し出れば7月20日もって退職できます。7月6日から7月20日までの間に申し出れば8月20日をもって退職となります。


就業規則などで、「退職日の1ヵ月前に申し出ること」などと期間が決まっており、会社の承諾を要すると定められていない場合は、民法の定めと会社が定めたルールとを比較して、より早期に退職できる方が適用されると考えられます。


 ●口頭での退職申出は、無効になる?


今回のケースで、トピ主さんは電話に出た男性社員に口頭で退職を申し出て、社長への伝言を頼んだということです。


就業規則などで退職届を提出するように決められている場合もありますが、その場合、口頭だけでの退職申し出は無効となってしまうのでしょうか。この点については、事案によりますが、必ず無効になるとは限りません。ただ、きちんと書面で届けをするのが無難でしょう。


気をつけたいのは、口頭で退職を申し出る場合は特になのですが、人事権のある役職者に直接申し出るべきだということです。そうしないときちんと退職の意思が伝わらなかったり、伝わった日付がずれてしまうこともあり、無用なトラブルを招きかねません。


なお、退職の申し出をして翌日にいきなり退職する、ということは、会社の承諾がない限りできません。その場合は理論的にはまだ雇用が続いていることとなりますので、出社をしなければ、申出の翌日から無断欠勤していることになってしまいます。その結果、会社が金銭に見積もることができる損害を被ったならば、その賠償責任は生じるでしょう。




【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
平成11年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における個人情報保護運営審議会、開発審査会の委員を歴任。

事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/