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キャバクラを辞めようとしたら「罰金50万円」請求された! 支払う必要はある?

2016年07月15日 10:02  弁護士ドットコム

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「キャバクラを今すぐ辞めたいのですが、辞めるのにペナルティが発生して罰金があります」。そんな悩みを抱える女性からの相談が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられました。


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彼女は、どのように店に言えば、罰金が取られずに、給料をきちんと受け取って退職できるのを気にしているそうです。


同様の相談は、他にも多く寄せられています。


ある女性は「子供も三人居ることから店に辞めさせて欲しい」と店側に退職を申し出たところ、「罰金50万円を支払うこと」と言われ、しぶしぶ契約書にサインしてしまったそうです。その結果、退職するまでの1か月間、無給で働くことになってしまいました。


彼女たちのように退職時に罰金を求められたら、支払う必要はあるのでしょうか。太田伸二弁護士に聞きました。


● ブラック企業でよく見られる手法


相談者の方が店から請求されている「罰金」は、店側が損害賠償のつもりで請求しているものだろうと思われます。


しかし、労働者には退職の自由がありますので、「退職すること」自体を理由とする損害賠償請求は、裁判ではまず認められません。(なお、キャバクラ等では従業員との間での契約を「業務委託契約」という名称にしていることもあるようです。ただ、出退勤の時間や業務のやり方等で店の指揮命令に従わなければならない実態があるのであれば、労働契約と判断され、労働基準法等の規制が及ぶことになります)



また、罰金を払わなければ辞められないと店が言っているのも問題です。法律上、2週間前までに退職の意思表示をすれば、原則として退職が認められます。その2週間の期間についても、有給休暇を取得すること等で出勤しないことができます。以上のとおりですので、相談者の方が罰金を払う必要はありません。


また、「退職時に罰金を支払う」という内容の契約は、労働者の退職の自由を制限するもので、労働基準法16条が禁止する損害賠償の予定に当たります。仮にそのような契約書にサインをしていたとしても無効であり、罰金を払う必要はありません。


このような退職時に損害賠償請求をちらつかせるやり方は、いわゆる「ブラック企業」でよく見られる手法です。こういった会社の場合、かえって労働者の方から在職中の残業代等を請求できる事案も珍しくありません。ですので、このようなトラブルに遭ったら、労働問題に取り組む弁護士に相談いただきたいと思います。




【取材協力弁護士】
太田 伸二(おおた・しんじ)弁護士
太田 伸二(おおた・しんじ)弁護士
2009年弁護士登録。新62期。ブラック企業対策仙台弁護団事務局長、ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、日本労働弁護団全国常任幹事。

事務所名:新里・鈴木法律事務所