自覚の有無にかかわらず、「これがないと生きていけない」という趣味嗜好を持つ人は少なくないだろう。しかしそれが日常生活に支障をきたし、周囲に迷惑をかけるほどなら「依存症」かもしれない。
趣味との違いは「自分でブレーキをかけられないこと」だという。7月14日放送の「ノンストップ!」(フジテレビ)では、50歳で突然アイドルにのめりこんだ商社マンの姿が紹介されていた。(ライター:okei)
心のスキマに入り込む「ドジだけど、可愛いなあ」
商社に勤めるNさん(50歳)は営業成績が伸び悩み、憂鬱な日々を送っていた。妻は大学受験を控えた息子の世話にかかりきり。一人さびしく買ってきた弁当で夕食をとっていたところ、テレビで見かけたアイドルが「ドジばっかりだけど可愛いなあ」と気になった。
それまでアイドルに興味を持ったことなどなかったが、CDやグッズを購入。ライブにも行くようになり、やがて自室はポスターだらけに。会社をサボって追っかけをし出す始末で、Nさんの生活は「アイドル中心」になってしまった。
「いい歳して、みっともない!」という妻の批判にも聞く耳を持たず、いつの間にか息子の大学資金150万円を使い込んでいた。驚いて問いただすと、「だってライブにお金がかかるから…」などと言う。完全に立場を見失ってしまったNさんは、こう心情を明かす。
「仕事や家で嫌なことがあっても、アイドルに夢中になっていれば忘れられた」
依存症の心理カウンセリングに25年以上携わってきた浮世満理子さんは、Nさんが陥った心理を、アイドルと自分が似ているという「自己投影」と分析する。
「仕事がうまく行かない苦しい中、ドジだけど頑張っているアイドルを見ていると、その子を応援することで、自分を応援したいという気持ちになっているのです」
気持ちが満たされない限り「依存」は終わらない
アイドルの応援が自分自身の癒しになり、ハマりすぎてやめられない。若い人と違ってお金や時間の自由がききやすく、出会いや刺激が少ない分、1つのことにのめり込みやすくなると解説した。これは男性に限らず、女性にも当てはまるそうだ。
リアルな人間関係が希薄になりがちな現在、心の支えを探している人が増えていて、その種類も昔よりも多様化しているという。「スマホ」「アニメ」「ゲーム」依存のほか、変わったところでは「パワースポット依存」なども紹介されていた。
いずれもカウンセリングで要因を探っていくと、幼少期のトラウマなどと大げさなものがなくとも、「一人暮らしの寂しさ」や「夫の浮気」「不眠」など、よくあることがきっかけだった。浮世さんは、こう警告する。
「気持ちが満たされない限り、依存は続いていく。それはある一面、どんな人でも色んなモノの依存になってしまうということです」
ふと入り込んだ癒やしを追い払えるのか
番組では対策としては、他の趣味にも手を広げてひとつに入り込まないことや、スポーツなど身体を動かしてストレス解消することを薦めていた。しかし筆者が思うに、そういうことができない人だからこそ、依存にハマって出られないのではないだろうか。
ポイントは自分の満たされない気持ちを自覚した上で、意識的にコントロールしようとすることだろう。しかし「心のスキマ」にふと入りこんだ癒やしを追い払うことは、やはり難しいことではあるのだが。
あわせてよみたい:生活保護費でパチンコは本当にアリ?