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『インデペンデンス・デイ』20年ぶりの続編、ヒットの背景は洋画全盛期へのノスタルジー?

2016年07月14日 16:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(c)2016 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

 先々週末に公開された『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』に続いて、先週末も過去に日本で特大ヒットを記録した外国映画の続編が公開された。『インデペンデンス・デイ』の続編、『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』は先週の土日2日間で動員38万1521人、興収5億7022万5600円で初登場1位を獲得。全国963スクリーンという公開規模の大きさを考えると、これでも「まずまず」といったところだろう。劇場で体感した客層は比較的年齢層が高く、シリーズ作品として新規のファンを獲得しているよりも、20年前に推定興行収入113.1億(配給収入66.5億。当時は配給収入しか発表されなかった)を記録した『インデペンデンス・デイ』のファンが中心だと推測できるものだった。


参考:『アリス・イン・ワンダーランド』続編、前作から初動興収68%ダウンの衝撃


 この興収113.1億という数字、当時は『E.T.』と『ジュラシック・パーク』に次ぐ歴代3位というとんでもない大記録だった。『インデペンデンス・デイ』が公開された1996年の翌年には『タイタニック』が公開、さらにその翌年には『アルマゲドン』が公開、さらにその翌年からは『スター・ウォーズ』新3部作がスタートと、これ以降、100億超えの外国映画が毎年のように公開されて空前の「洋画ブロックバスター時代」が到来するが、いわば前作『インデペンデンス・デイ』はその口火を切った作品だったのだ。


 1996年といえば、街にはアムラーが闊歩し、ドラマ『ロング・バケーション』が社会現象となり、発売直後のポケモンが大流行(これは今年アメリカで大変なことになっているが)していた年。30代後半以上の世代にとって、『インデペンデンス・デイ』はそんな懐かしい記憶とも密接に結びついているはずだ。


 ちなみに、日本における洋画の全盛期は、『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001年12月公開)、『モンスターズ・インク』、『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』、『ロード・オブ・ザ・リング』、『スパイダーマン』が相次いで公開された2002年度がピークで、なんとこの年の外国映画の対邦画シェアは72.9%。近年の外国映画のシェアが40%前後で推移していることをふまえると、たった10数年の間にいかに洋画マーケットが相対的に衰退していったかがわかるだろう。


 今回何が残念だったって、これまでの慣習でいくと間違いなくあると思っていた、『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』公開タイミングでの前作『インデペンデンス・デイ』の地上波ゴールデンタイムでの放映がなかったこと。「わざわざDVDを購入したり借りたりしてまで観直す気はしないけど、テレビでやっていたらついまた観ちゃって、その勢いで続編を観に行くかも」という潜在的な層もかなりいたのではないか。実際、今回の『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』は、リブート流行りのこのご時勢にあって、意外なほど正統な続編(作品のクオリティ水準はまた別の話だが)として作られていて、前作のキャラクターも大挙出演しているのだ。まぁ、このタイミングで地上波での放送がなかったのは、ここ10数年の間に既に何度も放映していて、今さら高視聴率が望めないことが最大の理由であることは想像できるが……。逆に言うと、今回、公開直後に劇場に駆けつけて、あの一時代前のハリウッド映画のように大味な作品をちゃんと楽しめた観客は、古き良き(?)洋画ファンの鏡のような存在と言えるのかもしれない。(宇野維正)