勝敗のゆくえを見つめるだけがスポーツ観戦の醍醐味ではない
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、22人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選ぶ。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視し、さらにはサーキットでの振る舞い方や発言など週末のアクションを総合的に評価する。
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☆ フェリペ・ナッセ
風でゆらゆらと、いつコースを外れてもおかしくない動き。前後グリップがないマシンと格闘。チームメイトはFP3、ストウ・コーナー出口で滑り大クラッシュ。濡れ乾き路面となったレース、ボッタスに8秒遅れの15位は現状ザウバーでの健闘だ。
☆ ダニール・クビアト
セバスチャン・ベッテルとのバトルをずっと続け、僅差の10位フィニッシュ。移籍後トラブルまみれのマシンを信頼できず、モヤモヤ気分でいたが少しは晴れただろう。後半戦、トロロッソ6位防衛には彼の“復活"がカギとなる。
☆☆ ダニエル・リカルド
予選で初めてマックス・フェルスタッペンに先行され、ちょっとした話題に。いつもポジティブなリカルドも心中穏やかではない。本人の分析では「セクター3が劣った」とのこと。それがきちんと把握できていればいい。今季5度目の4位。
☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
フェリペ・マッサを抜こうとラインをずらし、再三アタックする見せ場を全域で。相手が乾いたラインを維持しているから、何度も滑って抜けない。終盤はタイヤセーブ、手堅く7位キープに切り替えダブル入賞。
☆☆ カルロス・サインツJr.
初日は大苦戦、大きくセッティングを変えたのが的中。最近コンスタントに入賞している秘密は、“テクニカル・フィードバック"の精度が向上したから。そこに成長を見出せる。1コーナーのスピンをうまく切り抜け7度目の入賞。
☆☆ ジェンソン・バトン
シルバーストンでは、なぜ、これほど不運に遭うのか……。予選でリヤウイング故障、Q1敗退17位。そこからのレースは“地味"で“着実"でも、このイギリスGPにジェンソンがいることの意義、それを認めよう。
■レース展開上で言えば致命的なミスも☆に値するプレー
☆☆☆ セルジオ・ペレス
32周目の1コーナーでスピン、フラットスポットができたが3周後に自己ベストを。このファイターぶりが彼らしい。だがデグラデーション進行を察知すると、キミ・ライコネンを抑えるのは無理と判断して6位に。周囲の戦況を読み、最善の結果を引き出す冷静さ、今年、ペレスが変わったのはそこではないか。
☆☆☆ ニコ・ロズベルグ
“無線ペナルティ大問題"の当事者になったが、ギヤトラブルそのものは49周目に解消されていたのがラップヒストリーで分かる。1分39秒台まで下落したのが1分36秒台に戻り、以前と同じペースを維持。どうしてトラブルが治ったのか(?)、チームから詳細説明はないが。一時パニックに襲われた彼とチームも、レース結果論としてはリタイアの危機を乗り越え15点を守った。しかしながら、スチュワードが3時間半審議の末に科した『10秒タイムペナルティ』は今後違反行為の判例となる。個人的に思ったのは、なぜレッドブル・チームは「10秒は軽すぎる」とアピールしなかったのか(リカルド3位の可能性もあったかもしれないのに……)。
☆☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
勝敗のゆくえを見つめるだけがスポーツ観戦の醍醐味ではない。24周目、アロンソが1コーナーで超高速スピン、回転するマシンに揺さぶられながら最適な位置へ。ギリギリの角度で止め切った。即脱出した一連の“スピーディプレー"は他の連中のスピンとは違った。レース展開上で言えば致命的なミスも☆に値するプレー。アロンソ以外、誰ができる?
☆☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
マゴッツ~ベケッツ~チャペルで抜く場面、昔見たような記憶がある。16周目、まだ濡れている路面状態で突進していった決断力こそ彼の真価。アウトからなら、成功しなくてもエスケープに逃げられる。でも彼には“成功イメージ"しかなかったはずだ。そうでなければあそこでは行かない。天下一品のオーバーテイク。
☆☆☆☆☆+ ルイス・ハミルトン
ハミルトン劇場となった第67回イギリスGP、3連勝&今季4勝目は記録に残るだけでなく記憶に刻まれるレース。予選でのタイム抹消や天候コンディションの変化など、本人にはとてつもないプレッシャーがかかっていた(はずだ)。この勝利に3勝分の誇りと価値を感じてもいい。1点差で後半戦にターン。夏を熱くするハミルトン。
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