2016年07月14日 10:41 弁護士ドットコム
「本当に行くあてがない」「追い出されるまでここにいるほかない」。東京・駒込や大塚などにあるインドカレー店の外国人従業員たちが、裁判所が指定した破産管財人から店を明け渡すよう迫られている。従業員達は、賃金未払いのまま仕事がなくなり、住む場所もなくなろうとしており、不安をつのらせている。
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インドカレー店「シャンティ」の従業員15人は、インドやバングラデシュ出身だ。そのうち10人以上は約4年前から、経営者が事務所として使っていたマンションの一室で集団生活していた。毎月の給料から光熱費などの名目で、それぞれ数万~十数万円が天引きされていたようだ。
ところが今年2月下旬、そのマンションの部屋が火事にあって、従業員たちは焼け出されてしまった。シャンティの総料理長をつとめていたチャンド・スラットさんによると、経営者から「しばらく店で寝泊まりするように」と指示されたという。
その後、新しい部屋をあてがわれることもないまま、6月に入って、経営者から一方的に解雇と店からの退去が通告された。従業員たちは「昨年から給料が滞りはじめて、今年に入ってから1円も支払われていない」と主張。自主的に店を開けつづけてきたが、6月30日に営業を停止した。
従業員たちは、労働組合をつくるなどして交渉しようとしていたが、運営会社と経営者個人が裁判所から破産手続きの開始決定を受けてしまった。さらに、裁判所が指定した破産管財人から、7月14日までにすべての店舗を明け渡すことを強く求められている。
日本語の不自由な従業員たちの友人で、通訳などをつとめているシード・アミヌル・ホックさんと従業員たちは7月13日夜、シャンティ南大塚店で弁護士ドットコムニュースの取材に応じた。家賃と保証金が高い東池袋店はすでに明け渡したが、残りの店舗にわかれて寝泊まりを続けているという。
南大塚店では、7人ほどが寝泊まりしているという。かつて客が食事をするところだったスペースに木製の台が置かれて、その上に布団が敷かれていた。アミヌルさんは「お金と仕事と家があったら、彼らはここにいるわけないよ。こんなところ、普通は住むところじゃないよ」と話した。
アミヌルさんによると、従業員たちは必死になって、新しい仕事を探しているが見つかっていない。不動産屋もまわったが、「従業員たちの置かれた状況に同情するだけで、家賃の支払いに不安があることや保証人の関係から、『部屋を貸してくれる大家を見つけるのは難しい』と言われた」という。
スラットさんは「無理やり追い出されるまでここにいるほかない」「お金もない。住むところもない、食べ物もない。保険もない。ストレスだけが溜まっていく。このまま誰か病気になったらどうしたらいいのか」とぶつけるあてのない怒りを口にした。
従業員たちは、新しく店のオーナーになってくれる人も探している。問い合わせは数件あったものの、まだ手を上げている人はいないようだ。さらに、労働基準監督署に「未払賃金立替払制度」の申請をおこなっているが、立替えまであと数カ月かかるということだ。生活費はもっぱら借金とアミヌルさんからの支援に頼っている。
「みんなでキャッシングカードで少しずつお金を借りて、食費を出し合っている。カードの支払い期限がきたら、友だちからお金を借りて返す。そして、またカードでお金を借りる。まるで自転車操業のような状況だよ。どうすればいいのか教えてほしいよ」(アミヌルさん)
「シャンティスタッフ一同」というツイッターのアカウントが、こうした状況を積極的に発信している。これまで寄付・カンパの申し出なども多数あったが、インドとバングラデシュの文化的背景から一切断ってきた。だが、そう悠長なことを言っていられない状況に追い込まれており、従業員たちはカンパを受けることも検討しているという。
(弁護士ドットコムニュース)