2016年07月13日 10:41 弁護士ドットコム
「本気の婚活はじめます」「婿、リクルートページへようこそ」。婚活パーティーや恋活アプリなど、出会いを求める人びとにとって、さまざまな場やツールが広がるなか、自分自身の結婚相手を見つけようと、ある女性がつくった個人サイトがじわりじわりと話題になっている。
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このサイトは、都内在住の高田真奈実さん(28歳)が立ち上げた「次世代婚活 (株)たかだまなみ パートナー採用特設ページ」(http://manadum.com/)。架空の企業採用に見立てているが、冗談ではなくて、実際に「婿」採用の選考に応募することができる。説明会やエントリーシート、面接を通過すれば、最終的に採用(結婚)にいたるというわけだ。
サイトにはほかにも、会社(高田さん)がどういう人材を求めているかという条件や、採用(結婚)のメリットやデメリットなど「採用情報」が、ユーモアを交えながら掲載されている。6月上旬のオープン以降、はてなブックマークは120以上ついた。ページビューも2万を超えたという(7月13日現在)。
なぜ、このようなサイトをつくって、結婚相手を見つけようとしているのか。高田さんにインタビューした。(取材・構成/山下真史)
――サイトを立ち上げたきっかけは、どういうものですか?
わたし、もともと「ダメ男」が好きで、恋愛したらダメになってしまう体質なんです。
18歳から東京に出てきて、もう10年経ちますが、最近まで「ダメ男にひっかかるのは、男運が悪いせいだ」と思っていました。だけど、本を読んだり、人と会ったりして、冷静に考えるうちに「自分でダメ男を選んでいる」ということにようやく気付きました。それで、いい加減かわりたいなと思ったのが、きっかけですね。
――どんなダメ男と付き合ったことがあるんですか?
サイトでも少し触れていますが、DV男や虚言癖の男など、各種のダメ男と付き合ってきました。DV男に首を絞められて意識を落としたり、虚言癖の男にお金を盗られたり・・・だけど、「この人、わたしがいないとダメなんじゃないか」と考えてしまうんです。いわゆるメンヘラ気質があるんです。
――どうしてダメ男に惹かれるんでしょうか?
わたしは「子宮の声」と呼んでいますが、直感ですね。「この人だ!」ということが、一瞬でわかる。少しギャンブル好きとか、お金の使い方がおかしいという人じゃなくて、選りすぐりのダメ男を選んでしまうセンサーがあるんです。
実は、わたしの実家は、お世辞にも円満家庭とはいいがたく、なんというか暴力性の高いところでした。大好きな父母が傷つけあっているのを見るのが本当に耐えられなくて、子どものころ家にいるのがつらかった。
東京に出てきたのも、そういう背景があるんですが、大学入って付き合った人が、まさにDV男だったんです。一緒に生活をおくるなかで、暴力をふるわれて、体中にアザができました。
――周りの人は止めないんですか?
もちろん、友だちは「ダメだよ」「まずいよ」といってくれました。だけど、最後に判断するのは自分。もう、そのころには相手にメロメロになっているから、友だちの忠告とか聞けなくなっていて、アザができても「車に当たった」「階段から落ちた」といっていました。
だけど、ある日、相手に首をしめられて、首周りがパンパンに膨れあがることがありました。さすがに、友だちが「いつもと様子がちがう」と気付いて、大学の先生も「今日の飛行機で地元に帰りなさい」といってくれた。テスト期間だったけど、「あとでも受けさせてあげるから」って。
それで、すぐに地元に帰りました。突然、東京から娘が戻ってきたものだから、両親もびっくりして・・・。こういう事件をくりかえしていくうちに、父もそれまでのおこないを反省してくれたのか、今では実家は円満な家庭になっています(笑)。
――ほんとうに結婚願望はありますか?
一応、結婚して、人並みの幸せな家庭をつくりたいという気持ちはあります。
ただ、「恋愛 → 結婚」という図式には、疑問を抱いています。付き合って、好きという気持ちが高まったら、結婚するという流れが嫌いなんです。
若いうちに勢いで結婚したり、付き合って結婚することに何の疑問もない人は少なくありません。しかし、そこには理性のようなものがない気がするんです。
とはいえ、婚活アプリみたいに「年収●百万円、職業●●、趣味●●」という条件・ニーズが合うからといって、結婚できるかといわれると、そうじゃないです。
条件だけで選べば、感情の部分が消えてときめきがなくなる。だけど、感情だけでは結婚までたどりつくことができない。そんなジレンマがあるわけです。
――たしかに、私(記者)の周りにも「条件で探しているから、なかなか結婚できない」という人がいますね・・・。
そうなんですね(笑)。おそらく、わたしたちは20代後半にもなると、「恋愛」ができなくなってくるんだと思います。わたしも、両親に紹介するときは、職業や地位で判断する部分があります。
東京にはいろんな人がいて、他人と比べてうらやましいと思ったり、焦ってしまうから、自分の気持ちに背いて、本当は望んでいないことをしてしまうということがあるんですよ。
ますます、条件だけを求める人は結婚できないし、いつまでも王子さまを待っている人も結婚はできるかもしれないけど、うまくいかないということが起きていくと思います。
――出会いの機会がないからサイトをつくったわけではない?
全然ちがいます。よく「出会いがない」という人がいますが、わたしの場合、交友関係も広いし、そう思ったことはありません。
最初は、フェイスブックに「婿募集」と出しました。「もし、一緒に地元に帰ってくれるんだったら、さまざまな特典がもらえます」って。それが周りの人たちにウケたんです。その後、今住んでいるシェアハウスの友だちが手伝ってくれて、ウェブサイトができあがりました。
この間に「実はわたしもダメ男にひっかかって、どうしたら良いのか」「結婚したいけど、恋愛から入るのは難しい」という相談がいろんな知人から寄せられてくるようになりました。わたしだけの問題じゃないんだと思いました。
――どうして「株式会社」なんですか?
よく、就職は結婚にたとえられますよね。実際に2つはよく似ていると思います。
「株式会社たかだまなみ」は、架空の会社ですが、友だちやシェアハウス住人に「取締役」という肩書をつけています。わたしの婿候補が見つかれば「取締役会」を開いて、審議にかけます。わたしは社長ですが独断で採用する権限がありません。
――会社説明会では、何をするんですか?
参加者にはまず、筆記試験を受けてもらいます。柔軟な考えができる人が好きなので、ユーモアを試す問題が盛りだくさんの内容になっています。試験後には答え合わせしたり、わたしが会社説明のプレゼンをします。
――どんな参加者がいましたか?
わざわざ新幹線でやってきた人がいました。お付き合いの経験がない方もいたし、度胸と行動力のある真面目な方がほとんどでした。あと1、2回くらい「説明会」を開きたいですね。
ただ、公開イベントなので、なかには出たくないという人もいます。「2人で飲みませんか?」という問い合わせも数件ありました。
たしかに、応募する側からすれば、みんなの前で評価されるのは酷だし、もう少しハードルを下げるべきかなと考えています。もちろん、最終的には取締役会で決めるので、わたしのタイプじゃない人と付き合って、結婚する可能性があります。
――自分のタイプじゃない人と結婚できますか?
たしかに、少し悩みどころです・・・(笑)。ただ、くりかえしますが、わたしが自分で選んだらダメなんです。今まで染み付いてきたやり方だと、また失敗するし、周りに迷惑をかけてしまいます。
今は、誰しもロールモデルがない時代です。だからこそ、「株式会社」的にやるという発想もあってもよいのではないかと思っています。そういう可能性を探るための実験的プロジェクトで、わたしがまさに実験台というわけです。まずは、わたしが幸せになってやろうじゃないかって。
(弁護士ドットコムニュース)