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「ふるさと納税」返礼品の課題「高所得者が優遇される仕組み」「国の税収が減る」

2016年07月13日 10:22  弁護士ドットコム

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自分で選んだ特定の自治体に寄付をすると、税金の控除を受けることができる「ふるさと納税」。最近では、寄付金の額に応じてもらえる返礼品をめぐって、自治体間の競争が激化しているとの指摘も出ている。


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総務省は今年4月に、「ふるさと納税」について、「商品券」や「家電」などお金に変えやすいものや、豪華すぎるものを返礼品としないよう、各自治体に自粛を呼び掛けている。ただし、呼びかけであるため、現在も商品券などを返礼品としている自治体もあるようだ。



この制度の利用者からすれば、寄付をすることで、豪華な返礼品をもらえることは悪くない話のように思えるが、返礼品が豪華になるとどのような問題があるのだろうか。山本邦人税理士に聞いた。



●換金性の高い返礼品の場合、実質的な減税に


ふるさと納税の仕組みは、実質的には「納税」ではなく「寄付」です。納税者が特定の自治体にふるさと納税をした金額から2000円を控除した額が、所得税と住民税から減額されるというものです。



納税者は、ふるさと納税をした結果、2000円を引いた額の納税が減額するので、実質的には2000円の負担で返礼品を受け取ることができます。



では実際の負担者は誰なのでしょうか。仮にA市に住む太郎さんが、B市にふるさと納税をするとします。そうすると国は所得税、A市は住民税の税収が減額します。一方B市は税収が増加します。またB市の返礼品の発注を受けた事業者も利益を得ることになります。



単純に見ると、国と納税者が住む自治体が負担をしていることになります。ところがB市に住む花子さんも、太郎さんと同額のふるさと納税をA市に対して行うとなるとどうなるでしょうか。A市とB市は減額した税収を超えるふるさと納税を受け取ることになります。その結果、国だけが負担をして、他はみな利益を享受することになります。また人口の多い自治体は、単純に考えると受け取る件数のほうが少なくなるでしょう。



つまりふるさと納税は、国や人口の多い自治体の税源を、人口の少ない自治体に移譲しながら、地方の産業を活性化する機能を有する制度ということです。



しかし、デメリットも考えられます。高所得者優遇につながるということです。ふるさと納税の住民税からの控除は、支払う住民税所得割の2割という上限があります。つまり多く納税している人ほど、多く返礼品を受け取ることができるからです。



さらに返礼品が商品券のような現金と同等物とみられるものであったり、電子機器や貴金属のように換金性の高いものである場合には、実質的に減税ということになりますので、高所得者優遇の傾向が強まります。



デメリットについては上手に規制をかけていって、ふるさと納税の本来の機能を十分に引き出していっていただきたいものです。



【取材協力税理士】


山本 邦人(やまもと・くにと)税理士


監査法人にて経営改善支援業務に従事した後、2005年に独立。現在は中小企業を中心に160件を超えるクライアントの財務顧問として業務を行う。税金面だけではなく、事業の継続的な発展という全体最適の観点からアドバイスを行う。


事務所名:山本公認会計士・税理士事務所


事務所URL:http://accg.jp


(弁護士ドットコムニュース)