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鈴鹿1000kmは“第3”に要注目。期待の若手と大ベテランに聞くスーパーGT

2016年07月12日 22:21  AUTOSPORT web

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脇阪薫一と話し込む中野信治
7月8~9日に鈴鹿サーキットで開催されたスーパーGTの公式テストでは、8月27~28日に行われる第6戦鈴鹿を見据えて、多くの第3ドライバーが走行したが、そのなかでふたりのドライバーに話を聞いた。

■輝きを放った牧野。ドライで2番手タイムをマーク
 昨年スーパーGTの併催レースとして誕生した若手登竜門のFIA-F4。その1年目のシーズンを、坪井翔とともに大いに盛り上げたのが、今季坪井とともに全日本F3にステップアップした牧野任祐だ。その才能は国内モータースポーツ界の多くが認めるところだが、今回の鈴鹿テストでは、全日本F3でTODA RACINGのチーム監督を務める加藤寛規、そして高橋一穂とともにシンティアム・アップル・ロータスをドライブした。

 じつは牧野にとって、今回のGTテストは「ハコ車自体が初めて」というもの。「なんせ車幅感覚が心配でした(笑)」という新鮮な体験となったが、初日のセッション1で9周をこなし、いきなり1分59秒739という加藤の1秒落ちのタイムをマークすると、午後のセッション2では16周をこなし、1分59秒120へタイムアップ。そのセッション2でのGT300の2番手タイムをマークする。

 セッション1の後、「思っていたよりは走れましたね。まだマージンをもって走っているし、500がいっぱいいるなかで勉強していかないといけないと思っています」と語ってくれた牧野は、ウエットとなった翌日のセッション4でも2分9秒115をマーク。GT300の5番手タイムとなったほか、セーフティカー訓練をこなすなど、いきなりの速さと活躍をみせてくれた。

 そんな牧野にとって、当然GT500との混走は初めてのこと。もちろん、これまでカートやフォーミュラで戦ってきたときのような、速さの違うマシンが走るレースは初めてだ。

「GT500、超速いですね(笑)。ビックリしました。130Rはやっ! って。なんか火花出てるし」と牧野。

「鈴鹿って、まあまあ狭いじゃないですか。200Rとかも曲がっているときに、2台通るのはキツいな……と思いましたね」

 今回の牧野のドライブについては、“師匠”の加藤も満足気の様子。タイムとしては今回GT300マザーシャシー勢が好調だったこと、タイヤなども影響しているようだが、それでも間違いなく今回のテストで最も光ったのは牧野なのは間違いないだろう。GTデビュー戦となる1000kmには、期待せずにはいられない。

■12年ぶりのGT。中野信治が感じたヨーロッパとの“違い”
 一方、今回なんと12年ぶりにGTの舞台に戻ってきたドライバーがいる。密山祥吾、元嶋佑弥とともにTAISAN SARD FJ AUDI R8をドライブした中野信治だ。かつてはF1、アメリカのCARTに挑み、近年はスポーツカーレースで活躍。“世界三大レース”に日本人として最初にすべて参戦した大ベテランだ。GT挑戦はまだシリーズがJGTCだった2004年にRAYBRIG NSXをドライブして以来、そしてGT300は初体験となる。

 23周といきなり多くの周回を重ね、スムーズな走りをみせたセッション1の後、中野に話を聞いてみると、「鈴鹿もひさびさだし、クルマも初めてですからね。あんまり得意じゃないハコなんですけど、相変わらず自分があんまり上手くないな~って(笑)。どうも自分の走り方がハコに合ってない気がしちゃって」と謙遜した。

「クルマ自体は悪いクルマじゃないので、慣れてくればそこそこ走ることができるかなと。とにかくチームの足を引っ張らないようにがんばらないと……というのが感想です(笑)」

 そんな中野は今回はGT300が初めての体験となるが、牧野と同様にGT500との走り方はどうなのだろうか? と聞いてみると、「ホントは分からないよ? パッと乗っただけだから」と断った上で、少々意外な言葉が返ってきた。

「ヨーロッパでは(自分が乗る)LMP2とLMP1の関係で慣れている部分はあるんですが、どちらかというと日本の方が『上のクラスがアグレッシブに来るな』という印象を受けました」と中野は言う。

「向こうでは上のクラスが下のクラスをリスペクトして、絶対に下のクラスのレースの邪魔にならないように抜いていくのが考え方。でも日本だと、下のクラスが上を邪魔しないようにしなさい……という感じでグイグイ来るので、そういう文化の違いみたいなものを感じましたね」

「ヨーロッパでは遅いクルマの方がミラーを見たり大変なので、それを抜けるタイミングまで待つのがルールなんだよね。それを無視してゴリゴリ入って来たり、譲れということはない。それをしないがために、ル・マンとかでもレースを失っている人がけっこういる」

「でも、300がブレーキ踏んで譲らなきゃいけないのか? みたいなときや、もう少し待ってくれてもいいんじゃないかな、ということが結構ありました」

 ちなみに、中野の言うGT500とGT300、またはGT300同士のコース上のマナーについては、他のGT300ドライバーからも前回のSUGOテスト、今回の鈴鹿テストと、かなり危険な目にあったという声が多く聞かれている。中には鈴鹿で「ちゃんと抜かせてあげたのに、抜かせ方が気にくわなかったのか、バックストレートで前に出た直後にブレーキ踏まれた」という恐ろしいこともあったとか。

■第3ドライバーがレースを左右する? その走りは必見
 第3ドライバーについては、今回話を聞くことができた牧野、中野のほかにも、ひさびさのスーパーGT挑戦となるドミニク・ファーンバッハー(SYNTIUM LMcorsa RC F GT3)や、大雨のセッション3でミスなく積極的に周回した石川京侍(エヴァRT初号機 Rn-s AMG GT)、VivaC 86 MCで2回目のテストを行い、しっかりとチームの信頼を得ている山下健太など、注目どころが存在感を放った。

 そして、本番ではStudie BMW M6に現役DTMドライバーのアウグスト・ファーフスが乗り込む。こちらも大いに期待したいところだろう。ひょっとすると第3ドライバーの活躍次第では、思わぬレースの順位変動があるかもしれない。