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琢磨、苦戦のショートオーバルでチームの成長を感じる

2016年07月12日 11:11  AUTOSPORT web

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インディカー第11戦アイオワに挑んだ佐藤琢磨
アイオワ・スピードウェイで行われたインディカー第11戦。全長0.894マイルのショートオーバルは、佐藤琢磨が初のポールポジションを獲得した思い出の地だ。

 2デイ開催の土曜日。抜けるような青空の下、暑過ぎないコンディションで今年のアイオワ・コーン300に向けたプラクティス、予選、そしてプラクティス・ファイナルが行われた。今年の決勝は日曜日で、全長0.894マイルとシリーズでもっとも小さなオーバル、それもバンクのオーバルを使ったレースは、夕方の4時過ぎのスタートが予定されており、余程のことが無い限り、ナイター照明が必要となる前にレースはゴールが迎えられる。

 佐藤琢磨とジャック・ホークスワース、AJフォイト・レーシングのふたりのドライバーたちは、先週のうちにアイオワ・スピードウェイで1日間だがテストを行った。ライバルチームも同様だ。前戦ロード・アメリカは事前テストに行けなくなったことで苦戦を強いられたフォイト陣営だったが、今回はベースとなるデータを集めてレースウイークエンドを迎えることができた。

 ところが、プラクティス1での琢磨は19番手とポジションが良くなかった……というより、悪かった。予選シミュレーションをセッションの終盤に行ったが、マシンをコンディションにピタリと合わせることができていなかった。しかし、こうした失敗もまた有効なデータとなる。琢磨はまったく慌てた様子もなく、「予選に向けては、今の走行データを基に調整を施すことができそう」と話していた。予選は午後2時開始の予定。正午過ぎまでのプラクティスに比べ、少しだが暑くなるとの予報が出されていた。
 
 アイオワでの予選は2連続ラップの合計タイムが競われる。琢磨のアタック順は5番手。1周目は17秒7213、2周目は17秒6556で、2ラップ合計は35秒3769=平均181.949mphをマークした。この時点では、直前のプラクティスで最速だったトニー・カナーン(チップ・ガナッシ)に続く2番手につけた。しかし、後続が次々と琢磨を上回り、最終的な予選結果は13位となった。チームメイトのホークスワースはすぐ後ろの14位だった。

「走った直後には良い感触があったんですが、結果的には順位はあまり良くないものになった。今日は最初の8人ぐらいまで路面がサラサラだったんだと思う。カナーンもかなり良さそうに見えていたけど、次々抜かれちゃってってたように」と琢磨は語った。

 サポートレースのストックカーはジェネラルタイヤ、もうひとつもクーパータイヤを使うインディライツで、彼らがかなり走り込んだ後での予選では、アタック順の早い者が不利に陥っていたかもしれない。ポールポジションは10番目にアタックしたサイモン・ペジナウ(チーム・ペンスキー)が獲得した。

 夕方の6時過ぎ、決勝に向けたファイナルプラクティスが行われた。決勝日にはウォームアップ走行も一切ナシで、レースのみだ。ここでの琢磨は16番手のタイムをマークした。またもポジションは良くなかった。しかし、ユーズドタイヤでのロングランに専念していた彼らは、その成果に満足していた。

「去年までより大きくなっているターン3のバンプが難しい。前を走るマシンのイン側にノーズを入れて風を自分のウイングに当てながら走ろうとすると、バンピーでマシンが暴れてしまう。でも、そこを速く走れないとオーバーテイクはできない」と琢磨は話していた。

 プラクティス1は午前11時から1時間少々で、予選は日中の午後2時から。そして、ファイナルプラクティスはレースがもうゴールを迎えようかという時間帯に30分間だけ開催された。レースとほぼ同一のコンディションとなるタイミングでの走行はナシで、どのチームもデータに想像力をプラスして決勝用マシンセッティングを決定する必要があった。

 決勝日のアイオワ州ニュートンは強烈な集中豪雨に見舞われた。午前10時から1時間以上に渡って大量の雨が降った。しかし、テキサスの悪夢は再現されずに済んだ。雨が止むとコースは本当に短時間で乾いていき、インディライツのレースが行われた。インディカーはファイナルプラクティスを土曜の夕方に行っており、そのスケジューリングが大正解だった。

 ハイバンクのショートトラックでは、ごく小さなセッティングの違いが大きな差となって返って来る。琢磨の戦いはレース前半が苦しいものとなっていた。

「タイヤの内圧がコンディションに合っていなかった。それは本当に難しいもので、自分たちが合わせることができたのは最後の2スティントのみだった」と語った。苦しみはしたが、チームとしてはこれまでにない戦いぶりを発揮できた。今シーズンのAJフォイト・レーシングは、苦手としてきたコースでこれまでより良いパフォーマンスを見せている。アイオワもそうなった。琢磨が得たリザルトは11位。2013年にチーム入りして以来、アイオワでのベストリザルトとなった(チームとしてのベストは、アイオワ開催初年度=2007年のダレン・マニングによる5位)。
 
 フォイト・チームは作戦力向上が課題で、今回もピットタイミングが1周遅くなったことでポジションを幾つかロスするシーンがあった。しかし、終盤のピットタイミングを遅らせる作戦で琢磨はポジションを挽回。11位に浮上した彼はその順位を保ったままゴールまでのファイナルスティントを走り抜いた。

 アイオワはフォイト入りしてからの琢磨が苦しんできたコースだ。デビュー2年目のKVレーシング時代にはキャリア初のポールポジションを獲得したコースだが、フォイトで走るようになった2013年からは予選は15位以下、決勝も23位、22位、19位と芳しくなかった。

 しかし、今年は予選、決勝ともにあと少しでトップ10入りが可能となっていた。

「今年はレース直前の週にテストを行うことができ、その成果が現れてチームとして進歩を遂げることができていました。今回の僕らはこれまでとは異なるフィロソフィのセッティングを試し、これまでより好い成績を残すことができたんです。チームが成長できということです」

「絶対的なスピードの向上が必要ですが、今日はとても安定した走りができていて、スティントの終盤に強いマシンになっていました」と琢磨は語った。

 空力での不利がホンダ勢には存在するようで、シボレーと同じダウンフォースを得ようとするとドラッグが増えてしまい、トップスピードに明確な違いが出ていた。レースはジョセフ・ニューガーデン(エド・カーペンター・レーシング)がスタート直後の1周目にポールシッターだったペジナウをパスしてトップに躍り出ると300周のうちの282周でトップを走り、ペンスキーとガナッシ勢をもってしても何ら対抗できない速さを見せつけて優勝した。ホンダ勢のトップは予選9位からトップ・グループに粘り強く残り続けたミカエル・アレシン(シュミット・ピーターソン)による5位。琢磨はアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)が6位、ジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン)の9位に続くホンダ勢4位だった。