2016年07月12日 10:11 弁護士ドットコム
会社から「通勤定期券の購入履歴」を提出するように命じられ焦っているーー。そんな投稿がネット上の提示版で話題になった。
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投稿者は、定期料金が同じだという理由で、会社に申告した区間より先の駅まで、余分に経路として定期券を購入していた。定期券の購入履歴と報告していた内容が異なっていることが会社にバレた場合、何らかの処分を受けるのではないかと投稿者は心配しているようだ。
この投稿に対し、「都内だと1駅歩くだけで4000円とか違う場合あるからな」と、提出した通勤経路より、わざと短い区間の定期を購入して、その差額を懐にいれているというコメントも寄せられた。
申告した通勤経路と異なる区間の定期を購入していた場合、会社から処分を受ける可能性はあるのだろうか。中には「横領だ」といった意見もあるが、刑事罰を受ける可能性はあるのだろうか。村松由紀子弁護士に聞いた。
「通勤手当の不正受給は、大きく分けての2つの形態があります。
(1)実際の居住地と異なる住所を申告する、
(2)実際の通勤経路と異なる経路を申告する、
このうち、(1)は悪質性が高いため、会社に発覚した際、最悪の場合は、詐欺罪として刑事告訴されるといった事態も想定されます(虚偽の事実を述べて通勤手当を受領しているので、横領罪ではなく詐欺罪となります)。
一方、(2)の場合は、形式的には詐欺罪に該当しますが、会社が刑事告訴することまでは考えにくいでしょう。会社としては、懲戒処分と、今までの差額を不当利得(民法703条)として返還請求をすることが考えられます
村松弁護士はこのように分析する。解雇されるようなこともありうるのか。
「(2)と同様のケースで、懲戒解雇は重過ぎるとした裁判例があるので、懲戒解雇までされることは無いと思います。
ただ、不当利得返還請求の時効は10年ですし、長期間にわたって虚偽の申告をしていると高額の返還を一括で迫られることになりかねません」
投稿者のケースは、差額が発生していないが、このような場合でも処分を受ける可能性はあるのか。
「虚偽の申告という事実に違いはありませんが、不当利得は発生していませんし、多くの場合は会社も、懲戒処分までは行わないでしょう」
また、通勤経路の虚偽申告は、こうした処分を受けるリスクのほか、「いざというとき」にも困ったことになると村松弁護士は指摘する。
「仮に通勤中に事故にあった場合には、虚偽の通勤経路を申告していたことにより、通勤災害とみなされず、労災認定されない危険があります。今からでも遅くないので、正しい通勤経路を申告しておく方が良いと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
村松 由紀子(むらまつ・ゆきこ)弁護士
弁護士法人クローバーの代表弁護士。同法人には、弁護士4名が在籍する他、社会保険労務士2名、行政書士1名が所属。交通事故をはじめとする事故、相続等の個人の問題から企業法務まで幅広く扱う。
事務所名:弁護士法人クローバー
事務所URL:http://www.yun-ken.net/