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岸井ゆきの、自身の演技スタンスとマーベル映画への愛を語る「ミュータントになりたいのかも」

2016年07月11日 15:01  リアルサウンド

リアルサウンド

岸井ゆきの

 真造圭伍による同名コミックを、『ソフトボーイ』『ヒーローマニア -生活-』の豊島圭介監督が映画化した『森山中教習所』が7月9日に公開された。ある日とんでもない再会を果たした高校時代の同級生ーーノーテンキな大学生・清高(野村周平)とネクラなヤクザの組員・轟木(賀来賢人)ーーが、一緒に通うことになった教習所で過ごすひと夏を描いた青春映画だ。リアルサウンド映画部では、清高に思いを寄せる松田役を演じた岸井ゆきのにインタビュー。本作の撮影時のエピソードから、女優として目指すこと、大好きだというマーベル映画の魅力まで、じっくりと語ってもらった。


参考:『99.9 -刑事専門弁護士-』加奈子役の岸井ゆきの、“攻めの演技”で飛躍できるか?


■「主役をやりたいという野心はない」


ーー岸井さんが今回演じた松田という役柄は、野村周平さん演じる清高に思いを寄せる女性なわけですが、初登場シーンから衝撃的な幕開けでしたね。


岸井ゆきの(以下、岸井):マネージャーさんに野村周平さんの彼女役と言われて台本を読んだんですけど、いきなりフられていたので「あれ、彼女じゃないぞ」と(笑)。清高くんと轟木くんがユンボに乗るシーンとかも、台本だけではどうなるか全く想像がつかなかったので、撮影に入る前からすごく楽しみでした。


ーー岸井さんは、その2人がひと夏を過ごす教習所のシーンにはほとんど登場しないんですよね。


岸井:そうなんですよ! 残念ながら。だから轟木くん役の賀来さんとは、最後のシーンの撮影の時にすれ違っただけで。


ーーそうなんですね。ほとんどのシーンで一緒だった野村周平さんとの共演はいかがでしたか?


岸井:もう本当にすごいなって。現場にいる野村くんがもうすでに清高くんだったので驚きました。ものすごいタイトなスケジュールの中、現場をすごく明るくしながら引っ張っていってくれたので、なんてすごい人なんだろうって。撮影に入るまでは、脚本を読んで、こうしようああしようっていろいろ考えていたんですけど、野村くんと豊島さんと一緒にやるんだったら、現場で一緒に作っていくほうが絶対いいなと思って、2人に乗っからせていただきました。


ーー豊島監督からは役作りに関して具体的な指示はあったんですか?


岸井:衣装合わせがあった日に松田さんのプロフィールが書かれた紙をもらったんですよ。そこには、両親のことや清高くんとの出会い方、冒頭のシーンの直前にあったことなど、映画の中では描かれていないバックグラウンドが書かれていたんです。それを元に役を作っていこうとして自分でいろいろ考えたりしていたんですけど、いざ現場に入ってみたらあまりにも野村くんが清高くんだったので、「もうやめたっ!」っていう感じでした(笑)。


ーー真造圭伍さんの原作は読まれていたんですか?


岸井:なんとなく直感的に読まないほうがいいかもって思ったので、撮影後に読みました。原作の松田さんが結構印象的な顔だったので、引きずられちゃいそうだなと思ったんですよね。今となっては、現場の感じからして、読んでも全然よかったなって思うんですけど。


ーー以前、『友だちのパパが好き』の配給会社、スポッテッドプロダクションズの直井卓俊さんに、岸井さんについてお話を伺ったことがあるんですよ。その際に「役を演じているというよりも、なりきるタイプ」とおっしゃっていたんですが、今回もそういう部分が大きかった?


岸井:『友だちのパパが好き』は、当て書きの役だったっていうこともあって、すごく自由にやらせてもらえたんですよ。だから半分自分だと思ってやっていましたね。もちろんそういう時もあるんですけど、作品によってアプローチの仕方は変わりますかね……。今回のように、現場で決める感じが多いかもしれません。『99.9―刑事専門弁護士―』の時の加奈子なんかは、役を作り込んで撮影に臨みました。でもそれも、最初はすごく考えてやっていたんですけど、回を重ねるごとにだんだん自分も加奈子に馴染んでいって、自由に動けるようになっていったので、最終的には役に入っていったのかもしれません。


ーー演技力の高さゆえにだと思うのですが、岸井さんは助演で活躍されることが多いですよね。岸井さんご自身は、主役をやりたいというような願望はあるんですか?


岸井:あったほうがいいのかなって思ったりもするんですけど、あまりそこに野心はないんですよね。ただ、物語の中に存在していたいなっていう気持ちはあるので、深く関わっていくっていうことを考えると、最終的には大きな役っていうことに繋がっていくのかもしれません。時代劇にはずっと出たいと思っていたので、『真田丸』に出演できるって決まった時はすごく嬉しかったです!


■『アベンジャーズ』か『X-MEN』に出演したい


ーー目標にしている女優さんはいたりするんですか?


岸井:うーん……。好きなのはエリザベス・オルセンですかね。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のスカーレット・ウィッチ役で好きになっちゃって、憧れているんですよ。すっごい美人っていうわけではない気がするんですけど、絶妙な顔をされるじゃないですか。そこがいいなって。


ーーアメコミ映画がお好きなんですね!


岸井:アメコミ映画っていうかマーベル映画が好きです。クリストファー・ノーランがすごく好きなので、『ダークナイト』シリーズは観てるんですけど、DCはあんまり興味なくて(笑)。観るのは邦画よりも洋画のほうが多いですね。アレクサンダー・ペインの作品とかも好きなんですけど、普通にすごく楽しく観てるのはマーベル映画です。『シビル・ウォー』は1番よかったですね。もう冒頭から涙が止まらなくて。なんていう映画を作ってしまったんだ! って。さっき「野心はない」って言いましたけど、ありました! 『アベンジャーズ』か『X-MEN』に出演したいです! ミュータントになりたいのかも。


ーーそれは大きな願望じゃないですか!


岸井:でも、『シビル・ウォー』を観ると、みんなすごいいろいろなものを抱えながら生きているのに、自分は何を勝手にミュータントになりたいとか言っているんだろうとか思っちゃいますよね……。アイアンマンとキャプテン・アメリカ、どっちを応援するかみたいなことを聞かれたりもしたんですけど、「いやいやいや!」と思って。予告編でバッキーがアイアンマンを殴っているのを観た時から、2人が戦っているところなんて観たくない!って感じだったんですよ。観たいのに、観たくないみたいな! あれ、、、すみません。何だか、アベンジャーズの話になってますね(笑)。


ーー(笑)。でもエリザベス・オルセンは、表情の変化が見事ですよね。それは今回の『森山中教習所』の冒頭シーンで岸井さんが見せた表情の変化にも通じるところがある気がします。


岸井:でもあれ、実は自分が思い描いていた顔と全然違ったんですよ。だから初号試写でバッと自分の顔が出てきた時、すごくビックリしちゃって。「あれっ……」って(笑)。その日はちょうど原作者の真造さんもいらっしゃっていたので、自分が演じた松田さんがあれで正解だったのか、すごく不安だったんです。真造さんにとっては、自分が描いたものだから、嫌なものは嫌じゃないですか。だから「どうしよう……」っていう感じだったんですけど、でも監督含め皆さんがすごいよかったって言ってくださって。真造さんも「岸井さんでよかったです」って言ってくださったので、それが答えなのかなって、すごくホッとしました。自分がどうっていうよりかは、皆さんがそう言ってくれたので、やってよかったなって。


ーーこれからはじまる夏にピッタリの作品でもありますよね。


岸井:そうですね。嫌だなって思う瞬間がひとつもなくて、最後にちょっと「うっ…」ってなるあの感じ。暖かくて、爽やかで、まっすぐな、こうありたいとかこうあってほしいっていうのがすごく詰まっているような作品ですね。私も21歳の頃に東京に出てきて1人暮らしを始めたんですけど、その年の夏、得意ではないお祭りに行ったことを思い出しました。その頃の出来事や気持ちをひとつの思い出として懐かしく感じたりして。『森山中教習所』はそういう気持ちになれる作品だと思います。あ、あとエンディング曲まででひとつの作品だと思える作品ってなかなかないんですけど、この作品は星野源さんの主題歌とエンドロールの最後の最後まででひとつの作品だと思えるぐらい素敵なので、皆さんにも最後まで、席を離れずにご覧いただきたいです。(宮川翔)