2016年07月11日 14:42 弁護士ドットコム
神奈川県内にある屋外キャンプ場でアダルトビデオ(AV)の撮影をおこなったとして、警視庁は7月8日までに、大手AV制作会社の社長や、出演した女優9人、男優24人など計52人を公然わいせつなどの疑いで書類送検した。
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報道によると、社長らは2013年9月30日と10月1日の2日間、神奈川県相模原市の屋外キャンプ場を貸し切って、AVの撮影をおこなった疑いが持たれている。女優らが容疑を認めた一方で、社長らは「見張りを立てて、一般の人が入れないようにしていた」と容疑を否認しているという。
今回は、AV出演強要をめぐり、大手AVプロダクションの元社長らが労働者派遣法違反で逮捕・略式起訴された事件に絡んで発覚したそうだ。AV撮影に関連した公然わいせつ事件で、これほど大規模な一斉摘発があるのは異例だそうだ。
今回のように、キャンプ場を貸し切りにして、「見張りを立てて、一般の人が入れないようにしていた」としても、公然わいせつ罪に問われるのだろうか。刑事事件にくわしい落合洋司弁護士に聞いた。
「公然わいせつ罪は、(1)公然と(2)わいせつな行為をすることで成立する犯罪です。
(1)公然とは、不特定または多数の人が認識できる状態のことをいいます。また、そういった行為を手助けすると、ほう助罪に問われます。
そして、不特定または多数の人々が、現実に認識していたことまで必要でなく、あくまで『認識可能であったかどうか』がポイントとなります。そのような行為がおこなわれれば、現実に認識されていなくても、社会の善良な風俗は害されるからです」
報道によると、撮影がおこなわれた屋外キャンプ場は借り切られていた。また、見張りも立てられていた可能性がある。
「仮に、そういった状態にあったとしても、不特定または多数の人々が認識可能な状態であれば、公然わいせつ罪が成立する余地はあるでしょう。
たとえば、かならずしも人里離れた場所ではなく、周囲に対してオープンなスペースであれば、そういう可能性もないとはいえません。
警察が公然わいせつ罪での立件を検討するにあたっては、公然性についても検討したはずです。その点について、それなりの根拠を持ち合わせたうえでの立件であったことは推測されます」
いわゆる「AV出演強要」問題との関連はどう見るか。
「今回、公然性の強さや社会、第三者におよぼした迷惑といった観点では、それほど事件性が強い案件とは考えにくく、2013年の撮影が今になって立件されていることからも、AV出演強要問題にからむ見せしめ的な要素を感じずにはいられないものもあります。
どちらかというと、不起訴処分になる可能性が高そうです」
落合弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
落合 洋司(おちあい・ようじ)弁護士
1989年、検事に任官、東京地検公安部等に勤務し2000年退官・弁護士登録。IT企業勤務を経て現在に至る。
事務所名:泉岳寺前法律事務所
事務所URL:http://d.hatena.ne.jp/yjochi/