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関ジャニ∞丸山隆平の魅力は“二面性”にありーー舞台『マクベス』で見せた新境地

2016年07月09日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 世界で最も偉大な劇作家のひとりであるシェイクスピア。彼の作品の中で『ハムレット』、『オセロー』、『リア王』と並んで“四大悲劇”と言われているのが、『マクベス』である。勇敢でありつつも小心者の将軍・マクベスが、妻と共に主君・ダンカン王を暗殺し王の座に就く。しかし、暗殺したという事実の重圧に耐え切れず錯乱し、暴政を行なってしまう。貪欲だった妻も罪悪感から病になり、マクベス自身も貴族や王子たちの復讐に倒れてしまう。『マクベス』は、こんな悲しいストーリーだ。しかし多くの人々を魅了し続けており、これまでオペラ・映画・舞台など様々な形で表現されてきた。そして現在、東京グローブ座にて、関ジャニ∞ 丸山隆平主演のもと『マクベス』の舞台が上演されている。


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 丸山にとって、2012年の『BOB』以来、4年ぶりの舞台となる『マクベス』は、彼の俳優キャリアにおいても大きな挑戦といえるだろう。関ジャニ∞の中でも底抜けに明るく、ボケやギャグを連発している丸山。世間的にも「明るくて面白い人」という印象が強い。演技の面でも、『世にも奇妙な物語 2013年 春の特別編「石油が出た」』(フジテレビ系)、『地獄先生ぬ~べ~』(日本テレビ系)といった作品でのひょうきんな役柄や、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(テレビ朝日系)、『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)といった作品でのヘタレキャラがハマり役のイメージだ。『マクベス』のような、本格的な悲劇とはなかなか結びつかないのではないだろうか。


 しかし、蓋を開けてみれば見事なマクベス王を演じていた。細かな心情の移り変わりを見事に表現しながらも、丸山の持ち味も活かされていたように感じた。なぜ明るいイメージの彼が、これほどまでに役をモノにすることができたのだろう。もちろん、厳しい稽古をしっかり積んできたこともあると思うが、丸山自身とマクベス王にはもともと、深い部分で共通する部分もあったのではないか。例えば、マクベス王の勇猛果敢に見えて実は小心者である性格と、丸山の普段は底抜けに明るいが実は繊細でやや内向的な性格には、二面性という意味で通じるところが見出せる。


 だからこそ、単にマクベス王というキャラクターを台本通りに演じるだけではなく、丸山隆平という味付けがしっかりできているのだろう。例えば、冒頭のシーン。戦いが終わり、戦友であるバンクォーとじゃれあう姿や、ダンカン王に褒められて嬉しそうにしている笑顔などは、普段の丸山を彷彿させる。一方で、ダンカン王を暗殺する際、愛する妻に尻を叩かれるも、忠誠心や恐怖心が拭い切れない様子や、疑心暗鬼から暴政を働き、次々と罪を犯して狂気に落ちていく様子には、丸山自身が心の闇を開放している印象も受ける。丸山ほどの売れっ子アイドルともなれば、マクベスと同じように激しい重圧を感じ、ときには疑心暗鬼に陥ったこともあったかもしれない。その演技の行間には、彼がこれまで歩んできただろう、決して楽ではない道のりが見え隠れしているように思えるのだ。


 開幕に向けたコメントで、「マクベスの悲しき生きざまを、全身全霊で観客の皆さまに届けたいと思います。」(出典:シアターガイド/丸山隆平主演×鈴木裕美演出『マクベス』が上演決定)と語っていた丸山。“丸山のマクベス”は、しっかりと観客の心に届いているのではないだろうか。(高橋梓)