就職活動中の学生や転職者にとっては「売り手市場」といわれているが、一方で企業は人手不足に危機感を募らせている。特に中小企業は深刻なようだ。
日本商工会議所が6月29日、「人手不足等への対応に関する調査」の結果を発表した。その結果、中小企業の55.6%が「人員が不足している」と回答。昨年の調査よりも5ポイント上昇しており、「人手不足感が強まっている」という。
「求人に正社員はおろかパートタイマーも集まらない」という声も
同調査には中小企業2405社が回答。従業員の規模別に見ると、「301人以上」の会社の73.3%が「不足している」と答えた。人手不足感が特に強まったのは「51人~100人」の会社で、前年比11.9ポイント増の60.6%だった。
企業の業種別に見ると、最も高かったのは「宿泊・飲食業」で79.8%。以下、「介護・看護」(77.5%)、「運輸業」(72.3%)、「建設業」(63.3%)と続いた。また、「求める人材」について聞いたところ、最もニーズが高かったのは「一定のキャリアを積んだミドル人材」(69.0%)で、次点の「高校卒業新卒社員」(41.2%)を大きく上回った。すべての業種で最も支持を集め、特に「介護・看護」では80.6%に達した。
企業からは人材不足について、以下のコメントが出ていた。
「一定の条件のもとに、海外からの人材受入れを容易にしてほしい」(栃木県 宿泊・飲食業)
「近年は、求人募集に対して正社員はおろか、パートタイマーも集まらない」(愛知県 製造業)
「運輸業界においては、長時間労働を削減するため努力しているが、その分乗務員の年収が少なくなり、人手不足が加速してしまう。荷主の運賃の値上げが長時間労働、人手不足の解決になるかと思う」(群馬県 運輸業)
人手不足は「宿泊・飲食業」では実に8割に迫る。全国的なホテル不足を受け、国土交通省は6月11日に宿泊施設の容積緩和を現在の1.5倍まで上乗せする方針を決めたが、建物だけ大きくなっても回す人がいなければ解決しない。来る2020年の東京オリンピックのことを考えても、まずは人材の確保が急務といえそうだ。
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