2016年07月08日 10:12 弁護士ドットコム
「夫の収入だけで生きていけるのに、仕事を辞めさせてもらえない」。そんな女性の悩みがインターネット掲示板に寄せられ、議論となった。
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相談者は結婚して1年で、夫婦共働き。夫の仕事は朝帰りが基本の激務だが、相談者の仕事も決して楽ではなく、毎晩22時頃に帰宅した後、家事のほとんどを負担している。家事と仕事の両立が辛いため、「仕事を辞めてパートに変えたい」と夫に相談したが、「子どももいないのにパート主婦になりたいとか甘え」と取り合ってくれないそうだ。夫はほとんど家事をしないが、その理由は、「自分の方が長く働いているからだ」という。
仕事が辛く、家事にも疲れ果て、自分のことを「家政婦みたいに感じてしまう」こともあるという。投稿者の悩みには、「モラハラ」「子供のいないうちに別れたほうがいい」と、離婚を勧めるアドバイスが寄せられた。
いくら激務とはいえ、家事の負担を妻に押し付け、かつ、仕事をパートに変えることを認めない夫と離婚することができるのか。河原崎 弘弁護士に聞いた。
「まず、現在の相談者の話の内容だけでは、離婚できる可能性は低いでしょう。
なぜなら、離婚は、婚姻生活が破綻している必要があります。言い換えると、『婚姻を継続し難い重大な事由』が存在する必要があります」
河原崎弁護士はこのように述べる。「婚姻生活が破綻している」といえるのはどんな場合なのか。
「夫の相談者との生活の中で、夫の態度が独善的であっても、夫婦の努力により、改善の余地があると見なされれば、婚姻生活は回復できると判断されます。
夫婦の性格の不一致と愛情の喪失によって、婚姻生活が深刻かつ治癒しがたい程度に破綻し、同居生活の回復が困難とされる客観的事実がないと、『婚姻を継続し難い重大な事由』があったとは認められません。
たとえば、夫の独善的な性格が原因で、妻が追い詰められ病気になり、夫婦の関係が元に戻ることは不可能だといった状態です」
今回のケースでは、まだ同居はしているようだが、そうした事情は裁判で考慮されるのか。
「同居している場合、破綻とみなされないことが多いです。食事、掃除、洗濯も別で、生活領域がすべて別の状態(家庭内別居)が、ある程度続き、回復できないとみなされないと、破綻ではありません。
相談者が、どうしても離婚したいのであれば、今後の自分の生活のため、正社員のまま、家庭内別居、あるいは、本当の別居に踏み切ると良いでしょう。
別居して、夫の態度が、良い方へ変化する場合もあるし、ある程度の別居期間を経れば、婚姻の破綻を認められる可能性も出て来ます」
河原崎弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
河原崎 弘(かわらざき・ひろし)弁護士
昭和48年、弁護士登録。平成16年~平成22年、都内の法科大学院教授。現在は「第二東京弁護士会」(苦情相談委員、紛議調停委員)、渋谷区法律相談委員。著書・監修に「ストーカー撃退マニュアル」「離婚の法律相談」「会社書式大全」「相続の諸手続きと届出のすべてがわかる本」「遺族のための葬儀法要相続供養がわかる本」
事務所名:河原崎法律事務所
事務所URL:http://www.asahi-net.or.jp/~zi3h-kwrz/