7月6日、メルセデスF1チームが奇妙なリリースを出した。
「オーストリアGPの前に収録されたテレビ番組『Servus TV』に出演したニキ・ラウダは誤解を解くため、以下のような声明を出します。
ルイス・ハミルトンは、バクーで行われたレースの週末で、彼が宿泊していたホテルの部屋に対しても、またサーキットで過ごすために使用している彼のプライベートルームに対しても、いかなる損傷を与えることはしていない。
ハミルトンは、チームメイトのニコ・ロズベルグとの関係について語ったことについて、嘘はついていない。
ニキは、番組での何気ないひとことが誇大に表現され、誤解を招いたことを後悔しています」
このリリースは、何のことを言っているのか。オーストリアGP期間中に、ラウダは地元オーストリアのServus TVの収録で「ハミルトンがヨーロッパGPの予選でクラッシュしたあと、ホテルとサーキットの自室を滅茶苦茶に荒らしたと語ったのだ。
今回のリリースで、それは事実ではないと否定されたわけだが、ラウダは歯に衣着せぬ発言で知られており、筆者はラウダの発言が事実無根とは思えない。
しかし、タイミングが悪かった。テレビ収録は7月1日の金曜日に行われ、ラウダの興味深いコメントは、その日のうちに一部メディアで報道された。つまりメルセデスは土曜日でも日曜日でも、グランプリ期間中いくらでも訂正することができたはずである。しかし、訂正のリリースが出たのは5日後の水曜日。おそらく決勝レースでチームメイト同士が接触、ハミルトンとロズベルグの関係に深い亀裂が入ってしまったからではないだろうか。メルセデスとしては、チームの非常勤会長であるラウダの発言を冗談として放っておくことができなくなってしまったのだ。
オーストリアGPのレース後には、こんなことがあった。毎戦メルセデスはレース後にドライバーの共同記者会見を行っており、レッドブルリンクでは2台が接触したこともあって大勢のメディアがメルセデスのモーターホームに集結していた。
最初にハミルトンの会見が行われ、優勝したハミルトンは笑顔で登場。だが、テレビカメラを見つけると広報と密談を始め、その後、チームの広報担当がテレビカメラだけは会見場から出るように指示を出したのである。
続くロズベルグの会見でも、まずロズベルグを広報室へ呼んで、数分間のレクチャーを行うほど、ピリピリしたムードとなっていた。そして今回のリリースが出された。チームとしては木曜日にドライバーを集めて行うミーティングで、チームオーダーも辞さない厳しい態度で臨みたい。その前にドライバーからチームに対して突っ込まれないよう、足元を固めておきたい。今回のリリースには、そんな思惑が見え隠れしている。