開幕まであと1カ月にせまった五輪の熱気に負けず劣らず、南米では絶大な人気を集めるツーリングカー選手権シリーズが存在する。それがブラジルを中心に開催されている『ストックカー・ブラジル』だ。
"お隣の大陸"オーストラリアで人気のV8スーパーカー同様に、こちらも5.7リッターのV8を用いたワンメイク車両が使用されており、この約500馬力を発生するダッジ製のエンジンにXトラック製の6速ギヤボックスを組み合わせている。
フレームは専用の鋼管スペースフレームをベースにカーボン補強材を組み合わせた高剛性シャシーを安価な価格で製造する代わり、制御系はロガー類を含め電子制御デバイスを一部容認するなど独自のもの。FRPで架装されるボディは、現在プジョー407、シボレー・マリブの2車種(2種類)。ドアは上方跳ね上げ式のシザーズドアを採用する。タイヤは一時グッドイヤーに切り替えられた時期もあったが、1979年のシリーズ創設以来ピレリが供給を担当している。
参戦するドライバーにも豪華な顔ぶれがそろう。F1を引退以降、インディなどに参戦したルーベンス・バリチェロがその筆頭。2014年には本格参戦から2年でシリーズタイトルを獲得するなど、鉄人ぶりを遺憾なく発揮している。また、その他のF1経験者ではリカルド・ゾンタ、ルチアーノ・ブルティなど母国のスターが参戦。また日本でF3経験のあるファビオ・カルボーンもフルエントリーするほか、トニー・カナーンやエリオ・カストロネベスといった海外で活躍するトップドライバーもスポットでエントリーするなど、かなりハイレベルなラインアップとなっている。
世界の潮流ではGT3やTCRのような多様な車種バラエティを性能調整で競わせるシリーズが優勢だ。隣国アルゼンチンでは『TC2000』と呼ばれる、こちらもワンメイクのツーリングカーシリーズも人気を集めている。こうした大排気量ツーリングカーのワンメイク・カテゴリーは『ドライバーがライバルやマシンと格闘する様子』が、よく伝わってくるという点において、独自の魅力を持っていることは間違いない。