2016年07月07日 10:32 弁護士ドットコム
うどん屋で隣の席の子どもが飛ばした汁で1万円以上するシャツにシミができた、親に弁償させたいーー。そんな投稿がネット上の掲示板で話題になった。
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投稿者がカウンター席で食事をしていると、家族連れが来店し、3歳ぐらいの子どもが投稿者の隣に座った。うどんが運ばれてくると、子どもはうどんのだし汁に浸した「おたま」を振り回し始めた。当然だし汁は周りに飛び散り、投稿者のシャツにシミをつくった。
親の態度はよくなかったため、投稿者は店ではなく、親に弁償させたいと考えている。クリーニング代を請求したり、服を弁償させることはできるのだろうか。尾崎博彦弁護士に聞いた。
「幼児の親に対して、シャツにシミができたことについて弁償をさせることは可能です」
尾崎弁護士はこのように述べる。子どもがやったことの責任は、当然親の責任になるということだろうか。
「法的に考えると、まず、3歳の幼児のしたことでシャツにシミをつけられたわけですが、幼児には『責任能力』がないので、損害賠償を請求することはできません。
責任能力とは、『自己の行為の責任を弁識する能力』すなわち、行為の善悪を判断でき、その判断に従って行動できる能力のことです。このような知的能力がまだ備わっていない幼児は『賠償の責任を負わない』のです(民法712条)。
責任能力が備わるのは通常11歳~12歳程度とされており、3歳の幼児には責任能力はありません。
この場合、幼児の監督者である親は『その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者』として、『その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う』ことになります(714条1項)。
したがって、幼児によりシャツにシミをつけられた人は、親に対して弁償を求めることができます」
弁償を求めることができる範囲はどこまでか。新品のシャツを請求することはできるのか。
「シャツの値段相当額の弁償を求めるのは難しいと思われます。損害賠償というのは、生じた損害の填補を意味しますので、新品の代金相当額は、損害以上のものを求めることになるからです。
したがってこの場合、幼児の親に請求できるのは、クリーニング代相当額ということになるでしょう」
尾崎弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
尾崎 博彦(おざき・ひろひこ)弁護士
大阪弁護士会消費者保護委員会 委員、同高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員
事務所名:尾崎法律事務所
事務所URL:http://ozaki-lawoffice.jp/