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「仕事が早い」を売りにすると自分の首を締めることになる? 納期との付き合いについて考える

2016年07月06日 18:00  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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「納期」という言葉に身構えてしまう社会人は決して少なくないはずだ。フリーの僕としては、何の後ろ盾もないので、納期や〆切といったものは、絶対に落とさないようにしているし、なんなら期限の数日前には滞りなく納品することを心がけてきた。

しかし、それはそれで弊害が生じてくるものだ。今回は、日々納期と向き合って仕事をしている人なら、決して他人事ではない話を紹介していきたい。(文:松本ミゾレ)

早いことだけが重宝され、短納期の仕事ばかりが来るようになる

先日、あるツイッターユーザーが、ものすごく深刻なツイートをしていた。こちらで紹介させていただきたい。

「自分のクオリティにさほどの自信があるわけでもなく、いまのクオリティすら、今後も維持できる確信はないから、ついついタイトな納期の仕事まで引き受けて、『早くできる』ことをウリのひとつにしようとしてしまう。そのことを重宝がられて、いつしか短納期の仕事ばかりが来るようになっている」

仕事が早いというのは、素晴らしい武器である。依頼する側にしてみれば、納期を落とさず、常に早めに納品をする人材は、たとえ外注であったとしてもキープしておきたいものだ。

しかし、あまりにも迅速にニーズに応え続けていると、いつしか「早くて当然」という印象を抱かれてしまうこともある。

僕は複数の案件を常に抱えているが、これまでに納期を落としたことはない。〆切の数日前には、余裕を持って入稿を完了している。ただ、こういうのは最初こそありがたいと思われるんだけど、そのうちに、どこかで「早くて当然」という空気になってしまう。

やがて、本来は月に10本ぐらいの納品頻度だったものが、20、30というかんじで、次々に仕事が舞い込むようになる。それはそれで稼げるので悪くないんだけど、これって冷静に考えると、別に自分が優秀というわけではなく、要求すればすぐに納品してくれる便利屋だと思われているだけなのだ。

打診したらすぐに仕事をしてくれる。タイトな納期にも対応する。依頼する側からしてみれば、随分便利な人材だろう。裏を返せば、早さという武器だけが先行してしまっている状態とも言える。

「早さ」という武器がなくなったとき、その人材の価値は失われてしまう…

次々に仕事が舞い込み、しかもその頻度は徐々に高まっていく。これは決して、このツイートをした人物と僕だけに当てはまる話ではないはずだ。

前項で紹介した人物のツイートには、続きがある。ちょっとそちらも見ていただきたい。

「『早くできる』を売り始めたら、もう『早くできる』ことしか期待されなくなってしまう。そして、早さがなくなったときに、価値がなくなる」

認めたくはないけど、これは真理だと思う。ほどほどのペースで、良いクオリティの仕事ができればそれが一番なんだけど、仕事が早い人って、それができないのだ。なんというか、さっさと終わらせて次の案件を手がけたいという強迫観念めいたものに囚われて、僕などは急いで納品してしまう。

するとその様子を見たクライアントが、納期まで2日あるかないかというタイミングで仕事を振ってくる。こういうことが先日もあった。まあ、流石に「そういうのはせめて10日前ぐらいに打診して」と言って断ったけど。

でも、みんながみんな断れるわけではない。大口のクライアントからの要請には、NOと言えない人だっているだろうし。まるで永遠に終わらないマラソンを続けるかのように、ひたすら迅速な納品を心がけて、それだけを武器にして、しかもさほど金銭的に報われていない。

そういう人が、僕の知る限りでも相当数いる。

そして僕の知る限り、この手の人々がその武器を失った場合、これまで無茶な納期を指定し続けてきたクライアントは一切手を差し伸べていない。武器は1つだけに絞らない方がいいようだ。

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