2016年07月06日 10:21 弁護士ドットコム
殺人事件の現場をペットのオウムが目撃していた――。米ミシガン州で開かれている殺人事件の裁判で、検察がペットの発した「言葉」を証拠として提出するか検討しているとロイターなどが報じた。
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報道によると、これは、妻が夫を殺害した容疑で逮捕・起訴された殺人事件の裁判。決定的な現場を目撃したと考えられているのは、夫婦が飼っていたオウムの「バド」だ。事件の後、殺された夫の元妻がバドを飼育している。バドは夫が死ぬ前に発した言葉を覚えており、その中に「撃つな("Don't shoot!")」という言葉も含まれているという。
オウムは知能が高いことで知られているが、日本でも、同様のケースが日本で起きた場合、オウムが発した言葉が、証拠になることはありうるのだろうか。刑事手続きに詳しい山田直子弁護士に聞いた。
「結論から言えば、オウムの発した言葉は、日本の裁判では『証言』として扱うことはできないですが、『撃つな』という言葉を発したという事実が、情況証拠のひとつとして扱われる可能性はあると思います」
山田弁護士はこのように述べる。どういうことだろうか。
「 証言(供述証拠)とは、訴訟当事者以外の第三者の裁判所に対する供述であって、供述者が人であることが前提となります。
オウムが、いかに人の言葉を発したとしても、日本の裁判では、『供述』、すなわち『証言』として取り扱うことはできません」
動物が、裁判の証拠として活躍する場面はないのか。
「警察犬の臭気選別検査の結果が、証拠となり得ることはあります。臭気選別というのは、犯行現場に残された、犯人が使用したとみられる物品と、被告人の匂いを警察犬に嗅がせて、被告人と犯人との同一性を立証するという手法です。
犬の臭覚が人間よりはるかにすぐれていることから、訓練を受けた警察犬を用いた臭気選別の結果は、条件次第では、証拠として扱われることがあります。」
オウムの発する言葉は、何らかの形で証拠にならないのか。
「今回のケースで言えば、オウムが『撃つな』と被害者によく似た話し方で言葉を発していることは、現場で被害者が第三者から撃たれた事実を推認させる間接的な証拠としては利用できる可能性があるでしょう。
しかし、オウムは知能が高く、物真似が上手であることが広く知られていますが、オウムの発する人の言葉が、正確に人の発言を再現することにつき、科学的根拠が確立しているとまでは言えない状況です。
警察犬の臭気選別とは異なり、証拠として扱うのは問題があるとして、証拠として認められない可能性がより大きいと思います」
山田弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
山田 直子(やまだ・なおこ)弁護士
奈良弁護士会所属(元検事)
事務所名:弁護士法人松柏法律事務所生駒事務所
事務所URL:http://shohaku-law.jp/