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V6、TOKIO、JUMP……大型音楽特番のジャニーズ企画にみる、コラボやシャッフルの「独自進化」

2016年07月05日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 テレビ各局恒例の夏の大型音楽特番が始まっている。そのなかで目玉企画になっているのが、ジャニーズによるコラボやシャッフルだ。


(参考記事:V6はグループで再ブレイクできるか


 6月29日には、『テレ東音楽祭(3)』が放送された。TOKIOの国分太一がMCの音楽特番で、今年が3回目になる。


 テレビ東京と言えば、アイドル番組の老舗でもあり、70年代のフォーリーブスの頃からジャニーズとの関係も深い。この日も、『ヤンヤン歌うスタジオ』など1980年代の田原俊彦や近藤真彦の映像をTOKIOやV6などの出演者が見る場面があった。また、テレビ東京にそれぞれレギュラー番組を持つA.B.C-ZとジャニーズWESTは、それぞれの持ち歌とともに、A.B.C-ZがSMAPの「SHAKE」、ジャニーズWESTが少年隊の「仮面舞踏会」を、そして両グループがコラボで光GENJIの「勇気100%」を披露した。


 さらに今回は、そんなテレ東らしさの極みとも言える、「異色」のコラボもあった。


 “解隊”から28年が経つシブがき隊の「100%…SOかもね!」を、元シブがき隊の薬丸裕英、V6の井ノ原快彦、そして国分太一の3人で歌ったのである。同局の人気番組『出没!アド街ック天国』で、井ノ原が司会、薬丸がレギュラーパネラーで共演している縁、またかつてTOKIOのアルバムで国分が同曲をカバーしていたこともあり、緊張のなかにも息がぴったりで素晴らしい出来だった。途中、当時のシブがき隊の映像が挟まれ、歌の後には薬丸がバク転の自虐ネタで締めていたのも懐かしかった。


 続いて7月2日には、嵐の櫻井翔が総合司会を務める11時間に渡る音楽特番『THE MUSIC DAY 夏のはじまり。』(日本テレビ系)が放送された。


 嵐の新曲『Power of the Paradise』の発表、そして初披露という話題もあったが、恒例企画として注目を集めていたのが、ジャニーズメンバーによるシャッフルメドレーだった。この日出演したTOKIO、V6、KinKi Kids、嵐、NEWS、関ジャニ∞、Hey! Say! JUMP、Sexy Zone、ジャニーズWESTの9組、総勢50人がシャッフルユニットを結成し、計9曲を歌った。


 現在のようなシャッフルメドレーは、2014年以来今年が3回目である。今回は「50人大シャッフル ジャニーズスーパー夏メドレー」ということで、夏にまつわる曲が歌われた。それもあってカミセンの『夏のかけら』が入るなど、昨年までの2回とはまた色合いが違うものになった。


 シャッフルには、コラボとはまた違うファンの楽しみも大きいはずだ。


 コラボの場合、グループという単位がどうしても残るが、シャッフルの場合はそれがない分、組み合わせの可能性も無限大とは言えないまでも相当幅広い。「今度はこういう条件で括ったこの人たちのシャッフルユニットが見たい」と想像するだけでも、ファンにとってはこのうえない楽しさがあるだろう。この日、会場の幕張メッセに詰めかけたジャニーズファンのすぐ目の前で次々とシャッフルユニットが登場する演出も、そんなファンとの距離感の近さを強調していたと思う。


 いずれにしても、ジャニーズ同士のコラボやシャッフルには、そんなファンの願いも含めた高揚するお祭り気分がある。グループの枠を超え、普段は違うグループのメンバーたちが歌いながら顔を見合わせ、肩を組み、時には悪戯っぽくじゃれ合う姿には、無二のワチャワチャ感が満ちあふれている。


 今回の『THE MUSIC DAY 夏のはじまり。』でも、そんなシーンが満載だった。NEWSの「渚のお姉サマー」を歌ったユニットのときには、最後V6の岡田准一がHey! Say! JUMPの山田涼介を肩車で抱き上げ、ファンに向けた山田の投げキッスを国分太一が横取りしようとする。また、当日ちょうど37歳の誕生日を迎えたV6の三宅健に対し、TOKIOの「LOVE YOU ONLY」を一緒に歌ったKinKi Kidsの堂本光一ら他のメンバーが、歌の最中順番に三宅を指でさして祝福する。他にもファンそれぞれに記憶に残る名場面があったにちがいない。


 ところで今回のシャッフル、選曲に過去2回とは異なる特徴があった。これまでの選曲はすべて出演グループの持ち歌からだったのに対し、今年は8曲目に光GENJIの「太陽がいっぱい」、9曲目に近藤真彦の「ギンギラギンにさりげなく」と、1980年代のジャニーズのヒット曲が歌われたことである。


 近年、音楽番組(歌番組)全般で、過去のヒット曲、懐かしの名曲をメインに据えた構成は多い。音楽特番だけでなく、レギュラーの歌番組などでもその傾向は強い。


 理由はいくつかあるだろうが、基本はヒット曲のありかたが変わってきたということがあるだろう。誰もが知るヒット曲が次々と出ることが難しくなった昨今、広い世代を対象にするテレビでは、どうしても過去の有名ヒット曲に頼るようになる。そして、それの繰り返しでは変化に乏しくなるので、本人以外の歌手が歌ったり、本人と別の歌手がコラボしたりというパターンも増える。


 その点、ジャニーズのコラボやシャッフルは、かつてのヒット曲を歌うにしても「ジャニーズ」という統一感があることで、あまり「過去」という感じはしない(もちろん若い世代のジャニーズファンにとってはそもそも曲を知らないという場合もあるだろうが)。


 『テレ東音楽祭(3)』でのシブがき隊復活コラボなども、薬丸はすでにジャニーズ事務所所属ではないにもかかわらず、そんな雰囲気はまったく感じさせなかった。「ジャニーズ」という独自の世界観を持つ、変わらない強固な地盤があるからなのだろう。特に今回のコラボに関しては、楽曲や振り付けが共有財産となっている強みが感じられた。


 それは『THE MUSIC DAY 夏のはじまり。』でも同様である。「ギンギラギンにさりげなく」のラスト、シャッフルに参加したジャニーズ全員がステージ上に勢揃いした場面、関ジャニ∞の村上信五と丸山隆平が飛び抜けたハイテンションで踊っていたが、それは私には当時のマッチのやんちゃな感じをちょっと思い起こさせるところがあった。


 こうしてみると、いまやコラボやシャッフルは、ジャニーズの提供するエンターテインメントの“ジャンル”のひとつとして確立しつつあるように思える。現役で活躍するグループも増え続け、以前からの歴史の蓄積もあるなかで、ジャニーズの世界をファンだけでなく一般の視聴者に向けて表現する方法としても、コラボやシャッフルは有効だろう。そういう目で見るならば、シブがき隊復活コラボも決して「異色」ではなく、コラボやシャッフルが多様化し、着実に「進化」していることの表れと言っていいのかもしれない。(太田省一)