人件費の削減などを理由に企業が実施している「希望退職制度」や「早期退職優遇制度」。東京商工リサーチによると、2015年に希望・早期退職者の募集実施を公表した上場企業は32社だった。
希望・早期退職を導入する企業の中には、高給取りの割に働きの悪い40代以上の社員に抜けてもらうことによって、会社全体の若返りを図るところも少なくない。しかし、そう上手くはいかないようだ。6月30日、ツイッターではこんな投稿が話題になった。
「メーカー某社、希望退職で高齢の高年収帯を減らそうと思ったのに、それ以上に若手が辞めたせいで、結果的に平均年収が上がってしまったらしい。笑い話にできないくらい残酷な結果ですね」
元シャープ20代社員「会社の未来が見えなかった」
会社を立て直そうとして制度を導入したのに、かえって若手社員が会社へ危機を募らせて辞めてしまった、ということのようだ。平均年収も無駄に上がったということになれば、まさに元の木阿弥といえるが、この投稿には「まぁそうなるよね」と納得する声が相次いだ。
「希望退職は『社外でも通用する優秀な人』『再就職しやすい人』から率先して辞めていくよね。そりゃそうだ、としか」
「優秀な若者は引き際も優秀」「リストラして会社が更に傾く典型例だよね」
投稿では具体的な企業名は明かされなかったが、実際、希望・早期退職制度を行った結果、若手が流出するというケースは少なくない。鴻海(台湾)傘下に入ったシャープは2012年に3000人、2015年に3200人とあわせて6200人にのぼる希望退職制度を実施。
だが、昨年10月の産経新聞の記事によれば、3200人が希望退職したのにあわせ、若手社員の流出が止まらない状態になったという。記事では、2015年春に退職した20代の元社員の「具体的な成長戦略がなく、会社の未来が見えなかった」という声を取り上げている。また、希望退職制度に申し込んだ人物も「『なぜ彼が』というほどの有能な人材」なのだという。
リストラを続けるソニーも平均年齢と平均年額給与が上昇
同じく電気機器メーカーのソニーも過去に何度も早期退職制度を導入しているが、若返りには至っていない。
最近では、2014年度末までに国内で約1500人の人員削減を掲げ、その一環として早期退職者を募集。対象は勤続10年以上の社員で、一般職は40歳以上、管理職は45歳以上だった。
しかし、なぜか平均年齢が上昇。有価証券報告書では、2013年度の社員数は1万4642人、平均年齢42.5歳、平均年額給与が885万772円だったが、2015年度には社員数が1万511人と減少した一方で、平均年齢は43.4歳、平均年額給与は935万4904円と上昇している。
社員数自体は減っているため、社員に支払う給与総額は削減に成功したとはいえるが、若くて気概のある社員を中心にした組織への転換はできていない。本質的な意味での経営のスリム化というのはなかなか難しいようだ。
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