オーストリアGPのFIA金曜チーム代表者会見は、ホンダの長谷川祐介F1総責任者が今季3度目の出席。F1界の一員として、定着しています。全体的には前日の木曜会見に続いて、これといった話題のない顔ぶれでした。
司会者からは出席した各チーム、レッドブル、ウイリアムズ、トロロッソ、ザウバーの近況について当たりさわりのない話題が振られましたが、面白かったのはザウバーのチームマネージャーであるベアト・ツェンダー。遅れがちなチームスタッフへの給与が払われたことを指摘されて「もちろん給料が支払われたことで雰囲気は明るくなったよ! くわしくはモニシャ(カルテンボーン代表)に聞いてもらうべきだけど、チームの誰もが未来があると信じられるようになったことが大きい」と明るい表情で回答。
ザウバーの地元スイスではアルプス山脈を縦断する世界最長57.1kmのゴッタルド基底トンネルという鉄道トンネルが開通したことを受けて「スイスでは世界最長のトンネルが開通したばかりだけど、どんなトンネルにも出口はあり、光が見えるものだ」と表現しました。
スチュワードの聴聞にも立ち会って言葉巧みに「おとがめなし」の裁定を勝ち獲るのもチームマネージャーの重要な仕事だと豪語するツェンダーだけに「我々のトンネルも恐ろしく長かったが、そのトンネルも(残りの距離は)短くなってきている」と、うまいことを言います。その直後にパドックですれ違い、軽く会釈したモニシャの表情が、少し柔和でホッとしたように見えたのは気のせいではなかったと思います。
記者席からの質問は、やはり話題の「ブレグジット」英国のEU離脱について、チーム側の受け止め方を問うものに。イギリスに本拠地を置くレッドブルのポール・モナハンもウイリアムズのロブ・スメドリーも「短期的な影響は何もない。長期的な視点で、どんな影響が出るかは状況を見守るしかない」という見解。
さらに金曜フリー走行でマックス・フェルスタッペンがサスペンションを壊して文句を言っていた「黄色い縁石」についての質問も飛びました。これには多くのチーム関係者が「間違いなく午後5時からのドライバーズ・ブリーフィングでチャーリー(ホワイティング)と話し合われるだろう」との答え。
しかし対応策については、ツェンダーは「いくつか取り除くことになるかもしれない」と言いながらも「たいていチャーリーは『だったら、そこを走らなきゃ良い』と言うだろう」と、あきらめムード。マノーのチーフデザイナー、ルカ・フルバットは「ウチは何回か、その縁石に乗ったけど問題はなかった」と語っていました。
実際ドライバーズ・ブリーフィングは15分ほどで呆気なく終了しており、やはりホワイティングは「トラックリミットを守らせるための縁石なのだから踏まないのが当たり前だ」と突っぱねた様子。ツェンダーの“読み”は正しかったのでした。