奨学金の返済を滞納し、訴訟を起こされる若者が急増している。6月30日放送の「ノンストップ!」(フジテレビ)では、奨学金制度の返済に苦しみ自己破産に追い込まれた女性が紹介された。VTRで登場したAさん(29歳)は、高校と大学で奨学金を7年間利用し、400万円を滞納。現在の心境をこう明かした。
「奨学金で、こんなに大変になると思わなかったから。逆に、奨学金を借りてまで大学に通わなくてもよかったかな……」
消費者金融の借金はゼロになるけど
Aさんは両親と祖父母、姉、弟の7人家族。生活は苦しかったが、大学で学びたい気持ちから進学を決めた。親に負担をかけないよう上限いっぱいの12万円を借り、奨学金は全額学費に、教科書代はバイト代で捻出した。
学校とバイトで多忙を極める中、祖父母が倒れ、学校・バイト・介護と苦しい日々に。家計を助けるため、バイト代も家に入れた。それでもAさんが大学を辞めなかったのは、大学を出ればいい就職先が見つかり、家族を支えられるという思いがあったからだ。
「奨学金を借りているから、それを返すにも卒業して、きちんとした就職、正社員として働けないと」
卒業後、無事に就職が決まり、月々2万2000円の返済が始まった。しかし最初は払えていたものの、徐々に滞納するようになる。奨学金の窓口に減額などを求めても認められず、矢のような返済の催促が来る。病院代なども滞り、消費者金融にお金を借りた。
仕事のストレスも重なり、Aさんは身体を壊して4年で退職。再就職先も見つからず、2年以上奨学金を滞納した。司法書士に相談すると自己破産を勧められ、現在申請中だ。ところがこれで問題は終わらない。Aさんはこう肩を落とす。
「自己破産したら消費者金融から借りた部分がゼロになるけれど、奨学金返済は一切ゼロにならない感じですね」
専門家は「最低限の額で借りるように」
自己破産した本人は支払い能力がないとみなされ、「連帯保証人」である家族が、それでも払えない場合は叔父や叔母など「保証人」のもとに請求が続いていく。究極的には、全員が自己破産しないと終わらないというのだ。
埼玉奨学金問題ネットワーク代表の柴田武男さんによれば、「実際にはそこまでには至らず、和解と言う形でどこかの段階で払うことにはなる」とのことだが、親戚にまで迷惑を掛ける苦悩は続く。
奨学金の滞納に至る原因の1つとして、柴田さんは未成年の10代から利用するため「本人に借金の感覚が薄い」ことも問題と指摘する。ゲストの博多大吉さんもかつて奨学金の利用者で、こう証言していた。
「審査を通った時点で借金している感覚はない。国がくれてるんじゃないかなと(思っちゃう)。『奨学金は逃げられる』なんてデマも流れるのよ」
督促する立場の独立行政法人日本学生支援機構は、「返還金が直ちに次の世代の奨学金の原資となるため、約束の期日までに返済していくことは非常に重要」とする。
柴田さんは最悪の事態に陥らないために、「最低限の額で借りるように心掛け、総額いくらになるのか考えておく」とアドバイス。大吉さんも「利息といっても本当に低いので、使いようによってはいい制度なんです」とまとめていた。(ライター:okei)
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