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社員一人ひとりの給料を「すべての社員の評価」で決める会社 酷評にさらされて涙ぐむ女性社員も

2016年07月02日 16:40  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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社員ひとり1人の給料を、すべての社員で話し合って決める会社がある。6月28日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、そんな異色の会社、横浜市にあるIT企業のアクロクエストテクノロジーを紹介していた。

同社は91年設立で社員約80人。売上高およそ10億円で、リゾート開発会社や鉄道会社のITシステム開発を手掛けている。年に一度の給料査定会議では、容赦ない厳しい指摘が飛び交っていた。(ライター:okei)

先輩社員から「グダグダになる」と厳しい意見

給料の決定は、過去1年間の自己評価から始まる。プログラムの開発力やサービス、コンサルティングの営業力など50項目を独自のシステムに打ち込み、ポイント集計で給料に反映。これに基づき個人の給料額を、2日間の会議でみんなで話し合って決めていくのだ。

査定会議初日には、各自が1年間の実績をプレゼンする。缶ビールでの乾杯から始まり、猫耳のカチューシャをつけた人までいて、軽いイベント的な雰囲気も漂っていた。しかしプレンが終わると、他の社員から勤務態度からその年の成果まで遠慮ない意見が飛び交う。

入社3年目の男性社員Kさんは、現在の給料は約22万円。去年プロジェクトを成功させ、今年は給料アップに自信があったが、先輩社員から厳しい意見を浴びせられた。

「部下の指導が時々甘くなっている。言うべきことは言うべき。まだ、そこが弱い」
「問題が起きたときうまくできない。グダグダになってしまうよね」

それでもKさんは翌日の決定会議では成果が認められ、月1万6100円のアップ。「今までの行いは正しかったと認めてもらえる機会は、次の頑張りにつながる」と笑顔を見せた。

成果が上がらず「月2500円のダウン」も

一方、同期で常にトップを走る入社4年目の女性社員Yさんは、月給約27万円。去年は初の開発リーダーに抜擢されたが、成果を出せていないためプレゼンでは控えめな提案だ。それでも容赦ない酷評に晒された。

「言われたことをやるレベルから、もうひとつ上がってほしい」
「苦手なことに対する相談を全然しない。避けている」
「単純に視点が低いと感じています」

集中砲火に思わず涙がこぼれるYさん。更なる向上を期待するとして、月2500円のダウンとなった。Yさんは「悔しいは悔しいですね。ただ、これをバネに次は絶対伸びなければいけない」と真剣な面持ちで感想を語っていた。

社長の新免(しんめん)流氏は、以前勤めていた会社で「言いたいことを言っていたらクビになった」経験がある。「若造のくせに何を言っているんだ」と言われた悔しさから、社員が自由にモノを言える会社を作ろうと決意。社員の提案で実現した制度は、50以上にものぼる。その最たるものが、この給料査定制度だ。

ズバズバ言う社風こそ「会社の生命線」と社長

新免社長は「会社の中で一番大事なのは人材」と語り、「その人たちのやりがいを大事にすることで会社も発展する」と経営姿勢を示した。長い目でみると「禍根もあったかもしれない」と振り返りつつ、効果についてこう自信を示した。

「ただ、基本的にはみんなの納得性が高まるほうが大きい。納得性が高まれば、参加している意識も高まる。じゃあ自分も一生懸命勉強しようとか、意欲が高まってくる」

ふだんから褒めるときは褒め、言いたいときはズバズバ言う社風をみんなで必死に作っている。それが会社の生命線だという意識が強いという。

批判的な意見は辛いものだが、自分の弱点を知って改めれば、次回の評価アップへ希望がつながる。言う側も自分がちゃんとしていなければ、他人に意見することはできない。一見無謀のようだが社員が切磋琢磨しあえる、よくできた制度だと感じた。(ライター:okei)

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