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今宮純の金曜インプレッション:最速タイムを隠したロズベルグ、敵は上空に?

2016年07月02日 16:01  AUTOSPORT web

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ニコ・ロズベルグ
ロズベルグ・デイ──7月1日オーストリアGP金曜、まるで家の庭を走り回るように4.326kmショートコースでタイムアップ。午後にチロル地方特有の山間地シャワーが降ってきたが、2セッションともトップで盤石な滑り出し。今週の月曜、6月27日に31歳になったばかりだ。

「乗れているニコ」は、すぐわかる。フリー走行1回目の開始早々、4周目に1分09秒154、昨年の自己トップタイムを、たちまち更新。8周目に1分08秒166、昨年のハミルトン予選ポールタイムを破る。すごいペースで次元を上げていく。そして16周目に1分07秒644、13年前にシューマッハが予選1回目に記録したコースレコード1分07秒908を、あっさり抜く。それでもまだ攻め切ってはいないと見え、19周目に1分07秒373。1時間も経過しないうちに、サクッとニューレコード樹立。こんなロズベルグは見たことない。

 印象1、レッドブルリンクは高低&勾配差が大きく、アンダーステアになりがちなコースだ。どうしても旋回ラインがふくらみがちになり、彼はこういうときに適切なアクセルオンとともに、しなやかに曲がりこむ。「アンダーステアに強いニコ」なのだ。

 印象2、ストップ&ゴーと言いきれないけれどもコーナー出口での加速=トラクションが重要なコース。とても滑らかで無理も無駄もムラもないロズベルグ。ハミルトンとのドライビング・キャラクターの違いが、はっきり表れた「トラクションが適切なニコ」だ。

 印象3、上るセクター1と下るセクター2&3が特徴のコースで、どちらかと言えば下り坂のコンビネーション・コーナーが得意。ひとつの勝負コーナーを“一発挑戦的”に攻めまくるハミルトンに対して、ロズベルグは複合・複数コーナーをリズミカルにまとめようとする。いわば流れを重視し、単一コーナーにアクセントは置かない。それが良い場合もあれば、そうではない場合もあるが、ここでは重要。9つのコーナーしかないショートコース1周全体を俯瞰するようにとらえ、メリハリを整えていくリズム感が「ちょうどいいニコ」──。

 初日に見せた即座のタイムアップ連発。31歳のポイントリーダー、ロズベルグにはみなぎる自信が見てとれた。ラインを外してエスケープに逃げた際も落ち着きがあった。フリー走行2回目の終了寸前、セクター2まで最速タイムで来ていたのにタイムを出さずピットへ。手の内は出さない。コンディションさえ良ければ1分05秒台、超最短ラップタイム記録の手ごたえを感じたのだろう。

 しかし、まだ初日だ。この地方の天候はスパ・ウェザーなみに変わりやすい。私事だがA1リンク時代に芝のプレスパーキングが大雨で泥々になり、レンタカーがホイールスピンして脱出できず、クレーン車のお世話になったことがある。晴れれば爽やか、急なシャワーが到来すると事態は一変。過去2年オーストリアGPはスムーズに進み、ロズベルグは連勝してきているが、今年は一層気を引き締めて、あと2日間を過ごさねばなるまい。敵はハミルトンばかりか上空にもいるかもしれない。