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「ワタミ」ブラック企業批判受け、初の「労組」結成…会社にどんなメリットがある?

2016年07月02日 10:31  弁護士ドットコム

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過酷な労働環境が批判を集めている居酒屋大手の「ワタミ」で、5月16日に同社初の労働組合「ワタミメンバーズアライアンス」が結成されていたことがわかった。同社の経営陣はこれまで、「社員は家族だ」と労働組合に否定的だったが、強い批判への対応が必要になる中で、労組結成に至ったかたちだ。


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報道によると、結成された労働組合は、入社した社員全員に加入を義務付ける「ユニオンショップ制」をとり、グループ企業の正社員1800人とアルバイト約1万1千人が加入している。流通、繊維業界の労組を束ねるUAゼンセンが支援しているという。



この「ユニオンショップ制」とはどのような制度なのか。ワタミにとって、どんなメリットがあるのだろうか。労働問題に詳しい山田長正弁護士に聞いた。



●「御用組合」化してしまう可能性は?


「ユニオンショップ制とは、使用者である会社が労働協約で、自社で雇用する労働者のうち、その労働組合に加入しない者と組合員でなくなった者を解雇する義務を負う制度を指します。つまり、職場で労働者全員がその組合(今回でいうところの「ワタミメンバーズアライアンス」)に加入を義務付けられるということです。



ユニオンショップにより、労働組合側として組織率を高めることが可能ですし、その分、団体交渉等を通じて、より有利な労働条件を会社側から引き出せる可能性が高まる等のメリットがあります。その一方で、使用者側にも、労働組合を通して人事制度の改定などを行うことができるため、個別の従業員の同意を得なくても良い場合もある等のメリットもあります」



その場合、会社側と組合側が癒着して、「御用組合」化してしまう可能性はないだろうか。



「会社や労働組合の事情次第ですが、中には、ユニオンショップ制であるがために、労働組合が会社に従属して会社の言いなりになり、労働者の利益を守れないケースもあるとの批判がないわけでもありません。



今回のワタミのケースは、私自身、ワタミの内部事情に精通しているわけではありませんので何とも言えない面がありますが、たしかにワタミの劣悪な労働条件が社会的に広まったために、同社として現場の労働者の声をより反映したいとの姿勢を社会にアピールすることで、社会からの批判をかわす面はあるでしょう。



また、同社の労働組合が会社の言いなりになるのかまでは分かりませんが、先ほど説明したように、会社側が今後人事制度を構築するにあたり、労働組合を通すことで手続きを円滑に進めたいという思いもあるのかもしれませんね」



山田弁護士はこのように話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
山田 長正(やまだ・ながまさ)弁護士
企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。

事務所名:山田総合法律事務所
事務所URL:http://www.yamadasogo.jp/