新生ハースF1チームに移籍し、チーフエンジニアとしてチームのレース部門を統括する小松礼雄氏。今年のカナダGPはまさかのコミュニケーションのミスでピットタイミングがズレるハプニング。そして、初開催のバクーの小松エンジニアならではの攻略法などなど、F1最前線のエンジニアの思考が分かる……F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラム第8回をお届けします。
考えられない連携不足のミスと不運
バクーの新コースで感じた、コースへの対処法
今回はカナダGPとヨーロッパGPの2グランプリを振り返りたいと思います。まずはカナダからですが、日曜日は気温がすごく下がりました。金曜日は路面温度が32度から45度で寒くはなかったのですが、土曜日が気温が15度くらいまで下がって、路面が20度。日曜日は気温が12度、13度まで下がって、路面も20度くらいだったので特にフロントタイヤを機能させるのに苦労しました。
ウルトラソフトはモナコで初登場したのですが、モナコのレースでは低温で上手く働きませんでした。しかし、3月にカナダのタイヤを選ぶ時点ではこのことが分かっていなかったので、カナダにはスーパーソフトではなくウルトラソフトを選んでいました。ですから日曜の路面温度ではキツイかなと思っていたのですが、覚悟していたよりは良かったです。
ウチは1ストップで行く予定だったのですが、1回目のピットストップのときにドライバーとウチのチームの間でコミュニケーションミスがあって、ちょっと早くピットに入れすぎてしまいました。当初、レース前の予定ではピットタイミングは22周で、実際、そこまでいけたと思うのですが、タイヤのコンディションの伝え方で食い違いがあったんです。
あまり考えられないミスだけど、そういうミスを含めて、やはり新しいチームを上手く機能させるのは簡単ではないなと再認識しました。このお陰でロマン(グロージャン)は16周でピットに入ってしまった。あのタイミングで入るとワンストップはかなりきつくなります。僕らのワンストップのターゲットは22周で、ツーストップのターゲットは17周でした。ロマンはタイヤのインフォメーションを13周くらいに言ってきていたけど、僕は17周以前に入ることはまったく考えていなかったので、どんなに悪くても17周まではもたせると言っていました。そしてタイミング悪く、たまたま15周目、16周目のセクタータイムに悪いところがあったんですよね。だから本当にドライバーが言うようにタイヤが終わってきているのかなと思ってピットインすることにしました。しかし、実際にはタイヤは終わっていなかった(苦笑)。だから本当に最悪のミスでした。
そのミスがなくてワンストップでいけたとしても、後でフロントウイングが壊れたので結果的に入賞できなかったとは思います。しかし、仮にフロントウイングが壊れなければ、(ダニエル)リカルドと(ニコ)ヒュルケンベルグの間でフィニッシュできたとは思います。その場合は8位。中盤の争いは僅差なので、少しでもこういうミスがあったりすると、すぐに獲れるべきポイントが獲れなくなります。
ここ数戦、常に7位から10位のどこかでフィニッシュできる可能性を持っていながら、1回もチャンスを活かしていないのは大きな反省点です。モントリオールでのコミュニケーションミスは成熟したチームだったらあり得ないと思いますし、人が少ないので、みんな忙しすぎてなかなかレースの全体像を見るのが難しいとか、いろいろ言い訳はあるのですけど、タイヤの状態を見誤って、17周目のタイミングではピットに入れたのは二度と起こしてはいけないミスです
フロントウイングが壊れたのも、1周目の3コーナーの進入の時にロマンとエステバン(グティエレス)がちょっとぶつかっているんです。それでフロントウイングのエンドプレートにダメージがあって、振動で40周目に壊れてしまい、もう一度ピットインしなければいけなかった。このアクシデントはどちらが悪いとはハッキリ言えないですが、もちろん同士討ちは避けなければいけません。まあ、良かったことは、このフロントウイングにダメージがありながらも、ロマンのペースはレース中盤まで速かったということです。
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