2016年06月30日 10:22 弁護士ドットコム
未成年が運転する車に追突されたーー。交通事故の加害者の「支払い能力」に不安を感じている被害者から、弁護士ドットコムに相談が寄せられました。
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相談者は、加害者に対して、車の修理代のほか、レンタカー代金やケガの治療費、会社を休んだために生じた休業損害などの賠償を請求したいと考えています。ところが、加害者は未成年。しかも、親は無職で、収入がないそうです。
加害者が乗っていた車は、友人から借りたものということです。そこで、相談者は、車を貸した友人やその両親に賠償してもらえないかと考えているそうです。
相談者は、誰に、どのような請求をすることが考えられるのでしょうか。交通事故の問題に詳しい和氣良浩弁護士に解説してもらいました。
● 請求できる「損害」の範囲はどこまで?
基本的には、交通事故と因果関係があるといえる損害については、全て賠償請求の対象となります。
損害は、大きく「人身損害」と「物的損害」に分けることができます。
人身損害としては、治療費、通院交通費、休業損害、死亡や後遺症による逸失利益(事故がなければ得られたはずの利益)、慰謝料などが挙げられます。
物的損害としては、車の修理費、車両の時価額、代車の使用料などが挙げられます。必要かつ相当な範囲ということにはなりますが、交通事故と因果関係の認められる損害については、賠償を受ける対象となります。
● 事故の加害者ではなく、車の所有者にも請求できることがある
自動車(原動機付自転車を含む)による交通事故には、特別法である自動車損害賠償保障法が適用されます。
この場合、「運行供用者」も運転者と同様に賠償責任を負います(自賠法3条)。「運行供用者」というのは、加害自動車の運行をコントロールできる立場にあったり、その運行により利益を受けている者をいいます。
自動車の所有者は、この運行供用者にあたります。したがって、今回の加害車両の所有者が友人か、その両親である場合は、損害賠償を請求できます。
● 車の所有者もお金を持ってない! 誰に請求すればいい?
ただし、加害車両の所有者が未成年で、支払い能力がない場合も想定されます。こうした場合、できればその両親に請求したいということになると思います。
この運行供用者は、実質的に運行を支配しているか、運行により利益を上げているかという観点で判断されるので、所有者でなくても、運行供用者として認定される場合があります。
たとえば、過去の裁判例をみると、未成年者が両親と同居して、両親に扶養されていたことなどを理由に、両親に運行供用者責任を認めた事例が多数存在します。
したがって、未成年者が所有者である場合は、両親に損害賠償を請求できる場合が少なくないといえるでしょう。
ただし、この運行供用者責任の追及で賠償請求できる「損害」の範囲について、注意が必要です。物的損害は除かれ、人身損害のみに限定されています。物的損害については、原則通り、運転者本人にしか請求できないことに注意が必要です。
【取材協力弁護士】
和氣 良浩(わけ・よしひろ)弁護士
平成18年弁護士登録 大阪弁護士会所属 近畿地区を中心に、交通・労災事故などの損害賠償請求事案を被害者側代理人として数多く取り扱う。
事務所名:弁護士法人和氣綜合
事務所URL:http://www.wk-gl.com/