ヨーロッパGPで3位表彰台を獲得、ファン投票によって決まる「ドライバー・オブ・ザ・デー」に選出されたセルジオ・ペレス。第6戦モナコGPに続いて、2度目の受賞となった最大の理由が、素晴らしいドライビングにあることは間違いない。そして、フォース・インディアが採った戦略も素晴らしかった。
フリー走行3回目にクラッシュしてギヤボックスを損傷したペレスは、予選で2番手を獲得したものの、ギヤボックス交換による5番手降格のペナルティを受けて、7番手からスタートしていた。それでもスタートダッシュを決めて1周目に5番手まで上がり、前方のダニエル・リカルドとキミ・ライコネンが早めにピットインしたため、8周目には3番手に浮上していた。
ここでフォース・インディア陣営が警戒したのは、10番手からスタートしていたルイス・ハミルトンだった。ハミルトンが後ろに下がっていたのは予選Q3でクラッシュしたためで、本来トップ3の速さがある。そのハミルトンが11周目には4番手と迫ってきていた。ハミルトンはペレスとの差が約3秒となった15周目、先にピットイン。すると続く16周目にフォース・インディアはペレスをピットに入れた。
ペレスとハミルトンはスーパーソフトタイヤでスタート。ピレリによる1回目の推奨ピットストップは20周から21周だった。しかしフォース・インディアには元ブリヂストンの松崎淳タイヤ&ビークルサイエンス部門シニアエンジニアがいる。松崎エンジニアはタイヤの状況を読み、1回目のピットストップを何周目から何周目の間に行うべきかというウインドウ(幅)をチームに伝えていた。あとはライバルとなるドライバーのポジションやペース、予想される戦略、トラックポジションなど総合的に判断して、何周目にペレスをピットインさせるか最終判断を決めるのが、ストラテジストである。
フォース・インディアのレース・ストラテジストはオリバー・ナイトンというベテランのほかに、2015年にマクラーレンから移籍してきたバーニー・コリンズがいる。マクラーレン時代にはジェンソン・バトンのパフォーマンスエンジニアを務めた経験を持ち、松崎エンジニアによれば「非常に思いっきりがいい」決断を下すという。そのコリンズが選んだ戦略は、ハミルトンによるアンダーカットを阻止するため、早めの1ストップ戦略だった。
結果的にハミルトンはエンジンの設定に不具合を抱えたためにペースダウンして、直接対決することはなかった。それでも予定よりも早めにピットインしていたからこそ、8周目にピットインしていたライコネンを最終ラップでとらえ、実力で3位の座を手にする結果となった。
レース後、コリンズは「本当にギリギリの選択だった。でも、チェコ(ペレス)がうまくやってくれた」と喜んでいた。そして「チェコも素晴らしかったけど、ニコも今日は素晴らしいレースをしてくれたわ」とチームメイトを讃えた。
ペレスをピットに呼んだ4周後、コリンズはニコ・ヒュルケンベルグをピットインさせた。このときヒュルケンベルグはソフトからスーパーソフトへタイヤを交換。残り31周をスーパーソフトで走るというアグレッシブな戦略を授けていたのだ。
今週から始まるオーストリアとイギリスの2連戦も、フォース・インディアの得意なパワーサーキット。コース上でのパフォーマンスとともに、ストラテジストのキレのある判断にも注目したい。