「GP2のレースを見たときは、F1でも混乱は起きるだろう。少なくともセーフティカーは導入されると思っていた」
ヨーロッパGP後のフェルナンド・アロンソのコメントである。アロンソだけではなく、バルテリ・ボッタスなど多くのドライバーがレース後に語っていた言葉だ。なぜ市街地コースのバクー・シティ・サーキットで、F1のレースでは混乱が起きなかったのだろうか。
ひとつめの理由は、アロンソの言葉に隠されている。それは多くのF1ドライバーがGP2の決勝レース2を見ていたからだ。ヨーロッパGPの決勝は、通常のスタートよりも3時間遅い現地時間の午後5時。GP2のレース2は午後2時スタートだった。いわゆる「ヨーロッパ・ラウンド」のGP2は午前10時25分スタートなので、F1ドライバーはサーキットに到着していないケースもある。しかし、バクーではF1のスタートまでの間隔が短く、朝起きたドライバーが早めにサーキットに入っていた。ホテルはサーキット周辺にあるため、移動時間が少なく、余裕があったことも、多くのドライバーがGP2のレースを見ていた理由だろう。
果たして、F1ドライバーたちが注目するなかでスタートが切られたGP2の決勝レース2は、荒れに荒れた。そして、それを見たF1ドライバーたちが「自制心を働かせたのではないか」とジェンソン・バトンは分析した。
もうひとつの理由は、最高54度にも達した日曜のバクー・シティ・サーキットの路面温度だ。これによってタイヤのデグラデーションが予想よりも大きくなり、まずドライバーたちは自分が履いているタイヤと戦わなければならなくなった。優勝したニコ・ロズベルグは言う。
「いつもならバックマーカーを抜くのに、もう少し手を焼くんだけど、今回は比較的スムーズだった。びっくりだね」
バクーで開催された初めてのF1は荒れなかった。しかし、今年のデータをもとに来年以降はタイヤのデグラデーションを気にせずに、レースでもアグレッシブに攻められるようになる可能性はある。アゼルバイジャンでのヨーロッパGPの本当の魅力は、そのとき発揮されるのかもしれない。