アゼルバイジャンのバクーで開催されたGP2の決勝レース2で、松下信治は3番手からスタートしてリタイアとなった。チャンピオンを目指す松下にとって、それ以上に痛かったのはレース後に審議委員会が下したペナルティだ。セーフティカー明けの再スタート時に混乱を招いたとして、1ラウンドの出場停止処分。今週末F1オーストリアGPと併催される、レッドブルリンクは欠場となってしまった。
ペナルティの対象となったのは、合計3度の導入となったセーフティカーが退去して、再スタート時のドライビングだった。1回目はセーフティカーを抜き、2回目は再スタート直前に減速。3回目はラファエル・マルチェッロと接触。
実際どのような状況だったのか、振り返ってみよう。まずは、セーフティカーに追いついてしまった場面から。バクー・シティ・サーキットのメインストレートは、事実上16コーナーから始まる超ロングストレートである。メインストレートで、これを超える長さのサーキットはない。そのためセーフティカー解除後の再スタートは危険だという声が挙がっていた。セーフティカーとレーシングカーの速度が違いすぎるため、ピットインするセーフティカーとの距離をどれくらいとって再スタートを切るのがベストなのか判断が難しいためだ。これは「DRSを利用する場合も同様だった」と、松下自身が決勝レース1のあとに語っていた。
「最初は早くスリップにつきすぎてDRS地点の手前でオーバーテイクしそうになってしまったので、その次からは少し間を置いたら、今度はスリップに入れなくなってしまった。これから、エンジニアとデータ分析します」
セーフティカーが退去すると決まったら、集団のペースを決めることができるのはラップリーダーである。しかし一度、加速しはじめたら減速することはできない。松下は加速するタイミングがわずかに早く、セーフティカーがセーフティカーラインを超える前に、セーフティカーを抜いてしまったわけだ。
次に、再スタート直前での減速について。1回目の再スタート後、おそらく松下は「加速するのが早すぎた」と感じていたに違いない。そこで今度はギリギリまで加速を遅らせた。そのこと自体はルール違反ではないが、加減速は禁止されている。状況としては、松下の加速がスムーズではなかったために、1コーナーへ大集団で突っ込むかたちになり、アクシデントが続出。3度目のセーフティカーが導入され、3度目の再スタートでは松下がマルチェッロと接触してリタイアとなった。
最後の接触については、松下がターンインしようとしたところにマルチェッロがブレーキをロックさせて飛び込んできた。松下は接触を避けようと一度ステアリングを戻し、再びターンインしたが、目測を誤ったのか、避けきれずに接触となった。
もちろん松下に非がないとは言えないが、1ラウンドの出場停止は厳罰だ。もし再スタート時のラップリーダーが松下ではなく他のドライバーだったら、あるいはF1でセーフティカーが導入されていたら、どんな再スタートとなっていたのか。しかし、それを確認するチャンスはなかった。松下には気持ちを切り替えて、シルバーストンで鬱憤を晴らしてもらいたい。