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GENERATIONS、新山詩織、井上苑子、ブルエン、Swimy……6月29日発売新譜の注目作は?

2016年06月28日 13:11  リアルサウンド

リアルサウンド

GENERATIONS from EXILE TRIBE『涙』

 その週のリリース作品の中から、押さえておきたい新譜をご紹介する連載「本日、フラゲ日!」。6月29日リリースからは、GENERATIONS from EXILE TRIBE、新山詩織、井上苑子、BLUE ENCOUNT、Swimyをピックアップ。ライターの森朋之氏が、それぞれの特徴とともに、楽曲の聴きどころを解説します。(編集部)


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■GENERATIONS from EXILE TRIBE『涙』(SG)


 憂いを帯びたメロディライン、繊細なピアノから始まり、ストリングスを効果的に使った抒情的なアレンジメント、そして、恋人同士のいちばん最初の“涙”をテーマにしたリリック。GENERATIONSのニューシングル『涙』はリスナーの疑似恋愛妄想を刺激するような王道のバラードナンバー。夏の始まりの時期にあえてバラードをぶつけてくる試みもおもしろいし、楽曲のクオリティも文句なし。“優れたバラードによってリスナーの幅を広げ、本格的ブレイクのきっかけにつなげる”という戦略はEXILE TRIBEグループの得意技のひとつだが、GENERATIONSが首尾よく結果を残せるか、ぜひ注目してほしいと思う。成功のカギはおそらく、片寄涼太、数原龍友のボーカル。歌を前面に押し出した「涙」によって、若さだけではなく、いい歌を歌えるグループであることを印象付けることができれば、この後の展開は大きく違ってくるだろう。


■新山詩織『あたしはあたしのままで / 恋の中』(SG)


 歌いたいことが先にあるのではなくて、実際に歌ってみることで“自分には表現したいことがあったんだ”と気付くというのが本当のところだと思うのだが、新山詩織の新しい歌を聴くたびに、声そのものがメッセージを引き寄せることで生まれる圧倒的なリアリティを思い知らされる。もちろんニューシングルの1曲「あたしはあたしのまま」にも彼女の特性が強く表れている。焦燥という言葉がよく似合うメロディ、そして、切実な思いを生々しく映し出すボーカリゼーションによって、<泣きたい自分に苛立って><まだ行ける きっと>というフレーズに強い説得力を持たせているのだ。シンガーとしての彼女の魅力を正確に把握し、それをサウンドメイクに活かしている島田昌典のプロデュースワークも素晴らしい。もうひとつの表題曲「恋の中」は新山が出演した月9ドラマ『ラヴソング』の劇中歌。福山雅治の作詞作曲によるブルース歌謡的なナンバーだが、彼女の声のなかにある憂いを上手く引き出していると思う。


■井上苑子『ナツコイ』(SG)


 “miwa、大原櫻子に続く、ギター女子のブレイク候補No.1はこの子!”と10代の女の子を中心に大きな注目を集めているシンガーソングライター、井上苑子のメジャー2ndシングル。表題曲「ナツコイ」は人懐っこいボーカルの特徴を活かしたメロディライン、思春期の夏の恋をテーマにしたストレートな歌詞、爽やかなバンドサウンドと切ない感情を描き出すストリングスを軸にしたアレンジを含め、ヒットの法則を的確に押さえられたポップチューンに仕上がっている。SNSを中心にしたプロモーションで支持を得ている彼女だが、ボカロ、アニソンなどを日常的に聴き、ポップスに対するリテラシーが高まりまくっているであろう10代女子にアピールするためには、パッと聴いた瞬間のインパクトと何度も聴いても飽きないクオリティが必要不可欠なのだ。クリープハイプの代表曲「左耳」のカバーを収録することで、バンドシーンに対するアプローチも万全。この曲、舌足らずな女の子が歌うと何だかゾクゾクする。


■BLUE ENCOUNT『だいじょうぶ』(SG)


 ライブを観ていると時折「君の思いはよくわかった! だからもう次の曲をやってくれ!」と言いたくなるほど(←ディスってないよ)熱い気持ちをブチまけまくる田邊駿一(V&G)だが、あのエモーショナル過剰なMCがそのまま楽曲として結晶化したようなシングルである。もっとも濃密なのはやはり「だいじょうぶ」。<すべてに誓って言える/あなたは大丈夫>なんて歌詞、ふだんだったら「何の根拠があって言ってるんだよ!」と鼻白んでしまうだろうが、ライブやインタビューを通して田邊のキャラクターを知ってしまったら(この歌詞を本気で書いていることがわかるので)、無防備にも思い切りグッと来てしまう。ステージの上ですべてをさらけ出し、オーディエンスとの信頼関係が築き上げてきたからこそ成立する、驚異的なエモ・ナンバー。全力パワーで突き進む高速のビート、歌の感情を増幅させるようなギターサウンドの暑苦しさも最高。このまま10月の日本武道館ライブまでブッ飛ばしてほしい。


■Swimy『おひとりさま』(ミニAL)


 安定した人気を持つアニメ「銀魂°」EDテーマ「あっちむいて」(楽曲の緻密な構成とリンクしたMVは再生回数70万回を突破)でメジャーデビューした男の子2人、女の子2人のトリプルボーカル・バンド、Swimyのミニアルバム。『おひとりさま』というタイトル通り、“ひとり”“孤独”そして、その裏側にある“愛されたい”という切実な思いをテーマにしたこの作品には、メインソングライターであるTakumi(V&G)の“Swimy以前”の個人史が反映されているという。他者とのリアルな共感を得られないことに対する葛藤、抑えきれない承認欲求と将来に対する生々しい不安。それらの感情は言うまでもなく、現代を生きるすべての人が抱えているものだ。シリアスなテーマをむき出しにするのではなく、ドリーミーかつファンタジックなサウンドメイク、卓越したコーラスワークと優れたメロディメイクによって質の高いポップミュージックに結実させているところも見事。自らストーリーを生み出せるという意味では、セカオワに通じる才能を感じる。(森朋之)