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『オオカミ少女と黒王子』『溺れるナイフ』……少女漫画原作の映画が女子を魅了する3つの理由

2016年06月28日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)八田鮎子/集英社 (c)2016 映画「オオカミ少女と黒王子」製作委員会

 『オオカミ少女と黒王子』『溺れるナイフ』など、少女漫画原作の実写映画が近年増えている。人気漫画の実写映画化は話題性も高く、制作が発表されるたびにSNSは大きく賑わう。特に、少女漫画実写化となれば10~20代の女子たちが放っては置かない。旬の若手人気俳優をキャスティングしていることから、原作ファン以外にも好奇心をくすぐられる女子たちは多い。さらに、映画の人気から原作自体に改めて注目が集まることもある。熱心な原作ファンには、実写映画化に反対する向きも少なくないが、それでも怖いもの見たさから劇場に足を運んでしまうケースもある。世の女子たちを惹きつけてやまない少女漫画の実写映画。そのコンテンツとしての魅力を、改めて3つの視点から考察したい。


■その1:映画としても優れた作品が生まれている


 実写映画化される作品は、そもそも原作自体が多くの人を虜にしてしまうほど面白い。つまりストーリー展開や設定のクオリティはすでにお墨付きなのだ。ただ、基本的に何巻もある漫画を2時間前後の尺にまとめなければならないため、ある程度内容を変更したり削ったりしていることがほとんどだ。そこをどう料理するかで、女子たちの心をつかめるかどうかが決まる。


 過去に公開された『花より男子』(興行収入77.5億円)『のだめカンタービレ』(興行収入78.2億円)『NANA』(興行収入52.8億円)などは、成功を収めた実写映画の代表と言える。どの作品も、原作漫画のイメージに近い旬のキャストがチョイスされており、漫画の世界観を壊さない設定や映像に加え、原作を読んでいても読んでいなくても楽しめる内容、実写版としての独自の魅力なども追求されている。原作に対するリスペクトや理解とともに、映画としての魅力も感じられる作品となっているのだ。女子たちが憧れてやまなかった原作の世界観をうまく引き継ぎながら、実写化によってその恋愛模様や青春をよりリアルに感じられるのは、大きな魅力である。


 とくに昨今では、漫画の実写化に伴う難しさをクリアーし、原作ファンや映画ファンからも支持を得る名作も続々と誕生している。たとえば、今年公開された『ちはやふる』(参考:マンガ原作映画の新たな金字塔! 『ちはやふる』はどうしてこんなに「最高!」なのか?)。競技かるたをテーマにした少女漫画を、圧倒的な緊張感とスピード感で見事に表現。儚くも瑞々しい10代ならではの青春を爽やかに描き、映画としても高い評価を得た。


■その2:カップルでも楽しめる作品が増えている


 最近の少女漫画は、男性が見ても楽しめる作品が目立つ。ただの“恋愛モノ”ではなく、それぞれテーマや個性をしっかり持ち合わせており、バラエティーに富んでいるからだ。先述した『ちはやふる』はいわゆる“スポ根もの”の色が濃く、男女ともに楽しめる作品の代表格だが、恋愛を主題としたものでも男性人気の高い作品はある。『君に届け』や『ストロボ・エッジ』は爽やかな作風のため、少女漫画を苦手とする男性にも親しみやすく、『ラブコン』や『俺物語』はコメディー要素が強いため幅広い層に人気だ。昨今では、少年漫画にはない“キュンキュン”する内容に、病みつきになる男子も少なくないという。


 さらに、男性も楽しめる間口の広い作品は、そのままカップルのためのデートムービーとしても重宝される。自分たちの恋愛と重ねることができ、より感情移入して楽しめるほか、客観的に付き合い方や恋愛観を見つめなおすことができるのだ。恋愛を学ぶための教科書としても優れている少女漫画原作映画は、恋に悩む乙女たちはもちろんのこと、乙女心を理解したい男子たちにとっても有益なのである。


■その3:憧れの妄想シチュエーションが詰まっている!


 現実にはなかなか見られない“妄想シチュエーション”を、実写で表現することのインパクトも、近年の少女漫画原作映画の醍醐味といえよう。壁ドン(男性が女子を壁際に追い詰めて手を壁にドンと突く行為)、肩ズン(男性が女子の肩にズンと頭をもたれるようにして弱音を吐くこと)、顎クイ(男性が手で女子の顎をくいっと持ち上げ、顔を無理やり自分のほうへ向けさせること)、俺コス(男性が上着を脱いで女子にそっとかけてあげる行為)など、少女漫画ならではの表現は、その言葉が一人歩きして、近年は女子たちの間だけではなく広く世の中に浸透した。


 こうしたシチュエーションは、実際に体験することはほぼないと思われるが、だからこそ女子が憧れてやまない輝きを放っている。おそらく、フィクション性の高い漫画だからこそ生まれた表現であり、映像化するとその破壊力は倍増する。見ていて気恥ずかしくなることウケアイだが、そこがたまらないのである。


 世の女子たちの多くは、理想がギュッとつまった少女漫画の世界のヒロインになりたいと、一度くらいは本気で思ったはずだ。その夢をスクリーンの中で叶えてくれる“少女漫画の実写化”は、名作漫画が世にある限り、これからも続いていきそうだ。(戸塚安友奈)