2016年06月26日 10:21 弁護士ドットコム
「6月には祝日が存在せず、大変疲れるため・・・」。こんな一風変わった理由で、東京都内のIT企業バーグハンバーグバーグが「オリジナル祝日」をもうけたとして、インターネット上で話題になった。
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ツイッターに投稿された画像によると、この企業は「6月には祝日が存在せず、大変疲れるため、明日6月17日(金)をオリジナル祝日『なんでも溶かすキックの日』とし、休暇とする」という張り紙をした。この張り紙にはまた、「休暇中に出勤した者は解雇処分とする」と記されていた。
この企業は、毎年6月に「祝日が一日もない」ため、オリジナルの祝日を制定することが恒例となっているようだ。過去には「国民の屁の日」(2011年)といった名称をつけた祝日もあったという。
そもそも、こうしたオリジナルの祝日を企業がつくることは法的に問題ないのだろうか。さすがに今回はジョークだと考えられるが、「休暇中に出勤した者」を解雇できるのだろうか。河野祥多弁護士に聞いた。
「オリジナルの祝日を設けることは、常識的な範囲内であれば、労働環境の改善という労働者の利益になります。それだけにとどまらず、結果として、労働生産性が上がるなど、企業側にも利益をもたらすでしょう。労使双方に利益のある制度だと思います。
特に、祝日のない6月にもうけることで、それぞれの効果がより高まる可能性があるかもしれません」
河野弁護士はこのように評価する。問題点はないのだろうか。
「ただし、オリジナル祝日を設定して休日を増やすことにより、労働者が勤務する日時が減ることになります。とくに、日給制や時間給制の場合、会社の都合によって、もともと出勤する予定だった日時が減ることになり、休業手当の問題が生じるおそれがあります。
今回は内容が不明ですが、労働協約や就業規則、労働契約の項目にどのようにオリジナル祝日について記載されているか、どの程度周知されていたかなどよって、休業手当の支払いが必要かどうか結論に差が出ると考えられます」
休暇中に出勤した人を解雇することができるのだろうか。
「解雇をするためには、客観的に合理的な理由があり、それが社会通念上、相当であることが必要です。
すると、オリジナル祝日に出勤した人を解雇することは、明らかに客観的に合理的な理由がありません。解雇という方法も、社会通念上、相当なものとはいえないでしょう。したがって、休暇中に出勤した人を解雇することはできません。
会社としては、オリジナル祝日の趣旨をきちんと説明し、従業員に納得してもらうという地道な作業をしていく必要があるかと思います。
以上のように、祝日の設定・周知方法や罰則などには注意をする必要がありますが、オリジナル祝日をもうけて労働者の労働環境を改善する取り組みはおもしろい方法だと思います。今後もぜひ続けてほしいですね」
河野弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
河野 祥多(こうの・しょうた)弁護士
2007年に茅場町にて事務所を設立以来、個人の方の相談を受けると同時に、従業員100人以下の中小企業法務に力を入れている。最近は、ビザに関する相談も多い。土日相談、深夜相談も可能で、敷居の低い法律事務所をめざしている。
事務所名:むくの木法律事務所
事務所URL:http://www.mukunoki.info/