カナダGPのレースで燃費に苦しんだホンダ。カナダGPから2週連続で開催されたアゼルバイジャンのバクー・シティ・サーキットは、モントリオールよりも全開率が高く、連続全開時間も長い。それゆえ、単純に考えれば、燃費に厳しいレースが予想された。
それはアゼルバイジャンでの初めてのF1となったヨーロッパGP直前の長谷川祐介総責任者の言葉からもうかがえた。
「16コーナーを過ぎてから1コーナーまでの約2kmはほぼ全開で、トップスピードの差が出やすいので、われわれにとっては厳しい区間です。また、カナダでは回生したエネルギーを燃費側に回すのか、パワー側に回すのかバランスが難しい面もありましたが、バクーは使っても使ってもデプロイが足りないので、使うしかない。そういう点では悩む必要がありません。ただし、その分、燃費はきつくなります。今回もレースは厳しくなると思います」
しかし、フェルナンド・アロンソはギヤボックストラブルでリタイアしたが、チームメートのジェンソン・バトンは、10位のフェリペ・マッサから19秒差でフィニッシュした。しかも、トップと同一周回の51週を走りきった。1戦前のカナダが1ラップダウンで、10番手と27秒差だったから、上位陣との差は確実に縮まった。ヨーロッパGPを11位で完走したバトンも、「19番手からのスタートだったが、レースは楽しめた。11位なら悪くない」と、ポイント獲得はならなかったものの、自身のパフォーマンスには満足していた。
では、ホンダのパワーユニットはカナダGPとヨーロッパGPではハード的には何も変わっていないにもかからわず、なぜバクーで燃費に苦しまなかったのだろうか。それは、カナダとダウンフォースのレベルが異なっていたからである。
マクラーレンはカナダでは雨が降ることを予想して、空力のセッティングは若干ダウンフォースを付け気味にしていた。しかし、ヨーロッパGPは週末を通して完全なドライコンディションが予報されていたので、マクラーレンはストレートエンドでのスピードを重視して、空力は軽めのセットで土日を戦うことにしていたのである。
いわゆるレス・ダウンフォースの空力パッケージだった。ウイングによる空気抵抗が減れば、ストレートスピードが上がるだけでなく、空気抵抗も減る。カナダGPで燃費に苦しんだホンダが、ヨーロッパGPでは最後まで前車を追うことができたのは、そのためだった。
つまり、カナダGPで燃費に苦しんでいたのは、ホンダのエンジン(ICE)が極端に燃費が悪いということではなく、少なくとも空力のセッティングによっては、燃費的にはフェラーリ勢やルノー勢とほぼ互角だったと言える。
これは単に、燃費にとどまる話ではない。なぜなら、燃費が良いということは、燃焼効率が高いことにつながり、それはつまり、同じ燃料あたりのパワーが出ていることを意味する。ホンダのエンジンは言われているほど、燃費が悪くなければ、パワーがないわけでもない。ヨーロッパGPを終えて、長谷川総責任者も11位完走を「勇気付けられる結果だった」と評価した。
もちろん、ダウンフォースをしっかりと決めてもトップスピードでホンダを上回ったメルセデスとの間にはまだまだ大きな差があることは事実である。しかし、フェラーリがすでに28トークンを使用して4トークンしか残っていないのに対して、ホンダはまだ12トークンを残している。
長谷川総責任者はカナダGPの後、「エンジン本体のパフォーマンスを改善しなければならないことが明確になった」と語っていることからも、次にトークンを使用して大幅に改良してくるのはICEであることは間違いないだろう。問題はそれがいつ行われるのかだ。
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