ホンダが今年開発した新しいERS(エネルギー回生システム)は、いまやメルセデスの同システムと対等であると、ホンダの人々は考えている。
ERSは、2015年シーズンにおけるマクラーレン・ホンダの最大の弱点だった。昨年、彼らは予選で一度もトップ10に入れず、F1コンストラクターズ選手権を9位で終えた。
このため、ホンダのオフシーズンのエンジン開発の主眼は、排気からのエネルギー回生をいかにして改善するかに置かれていた。そして、2週間前のカナダGPでは、ERSのパフォーマンスをさらに高めるべく、ターボのアップデートも投入された。
その成果として、マクラーレンは過去4レース中3回のQ3進出を果たし、2016年の開幕からわずか8戦で、早くも2015年の総得点を3点上回っている。
「エネルギー回生システムに関して言えば、すでに目標を達成していて、いまではメルセデスと同じレベルにある」と、ホンダの長谷川祐介総責任者は語った。
「私たちの回生システムの性能は、トップチームと比べてもそれほど変わらない。それについては確かな自信を持っている」
「エネルギー回生量は昨年と比べれば倍増し、すでにトップレベルに達している。他チームより優れているかどうかはわからないものの、ほぼ遜色のない領域にいると言っても間違いではないだろう」
「これを2、3年で達成したのは、すごいことだと思う。他のメーカーは、ここまで来るのに7、8年を要したのだから」
ライバル各社とは異なり、ホンダは2016年のシーズン中のアップデートでは、まだ燃焼関係に開発トークンを使っていない。彼らは今季末までにあと12トークンを使えるが、長谷川総責任者によれば、ホンダは今シーズン終了までには「間違いなく」、ICE(内燃エンジン)にパフォーマンスアップデートを投入するという。
「どの領域にもまだ改善の余地はあるが、内燃エンジンのパフォーマンスに、より多くの力を注ぐ必要があるのは間違いない。まだ導入できないのは、アップデートによる十分なパフォーマンスゲインが確認されていないからだ」
「単体での実験段階では、ゲインの得られるものがいくつかある。ただ、パワーユニット全体として見たときに、それらが有効かどうかが確かめられていない。すべてを一気に変えてしまうほどの時間はないし、それができるだけのトークンもない。したがって、(アップデートは)個別に交換できる部品をいくつか変更するだけになるだろう」
フェルナンド・アロンソの手によって、マクラーレンは今季すでに2度のトップ6フィニッシュを達成した。長谷川総責任者は、チームとして今年の終わりまでに、マシン特性にあったサーキットでポディウムを目指すことを目標とすべきと考えているようだ。
これが実現できればホンダとしては満足と言えるような、成績面での具体的な目標はあるかとの質問に、長谷川総責任者は次のように答えた。
「ひとつは、言うまでもなく、これまで以上の成績をあげること。そして(もうひとつは)、ポディウムを狙うこと、あるいはその可能性を手にすることだ」